戦時中の手榴弾が今も大量放置されている、埼玉の川原に行ってみた

2015年10月27日 06:00

川の水は田畑や飲料水の水源として使われている。川原にゴミを捨てることは水質悪化につながりかねず、人間や動植物に悪影響を与える場合もある。そのため河川法や廃棄物処理法で不法投棄は厳しく禁止されている。

ところが埼玉県川越市の小川には、戦時中に国策で大量生産された「爆弾の残骸」が今も大量に遺棄されている。その正体は――陶製手榴弾(とうせいしゅりゅうだん)だ。

小川に遺棄された陶製手榴弾のかけら(編集部撮影)
小川に遺棄された陶製手榴弾のかけら(編集部撮影)

割れた頭蓋骨が散乱しているかのよう

現場は荒川に架かる治水橋近くにある。

治水橋。さいたま市大宮のビル群が遠くに見える
治水橋。さいたま市大宮のビル群が遠くに見える

といっても手榴弾は荒川河川敷に廃棄されたのではない。明治時代以降、蛇行して流れていた荒川を改修したときに残った「びん沼川」だ。川というより湿地みたいだが、現在も若干水が流れている。
筆者が訪れた日は晴天続きで水量は少なかった。しかし雨量の多い時期になれば増水しないとも限らない。

治水橋から見た「びん沼川」
治水橋から見た「びん沼川」

探検を開始した筆者だが、サイクリングロードのような道は整備されていない。両岸は樹木に覆われ、しかもその手前は柵で進入禁止になっていたりする。
柵を乗り越え、茂みを横断し、川中に出たくなった。しかしウェーダーを用意していない。ジーンズにスニーカーという服装では無謀な冒険だ。
1キロ以上歩いてもそれらしきスポットが見つからない。もう諦めて撤退しようか――そう思っていた矢先、目の前に1台の自動車が停まっていて、さらに川の方から人の声が聞こえる。もしやと思い近づくと、柵はなく、しかも樹木が途切れていた。川原の方を見渡すと、4人家族が地面を掘っている。

筆者は斜面を下りた。川原に広がっていたのは、まるで割れた頭蓋骨のような陶器のかけら群だった。

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白い陶片もあれば茶色に輝くきれいな陶片もあるが、しょせんは土くれ。周辺の景色に溶け込んでいるとはいえ、この状態が戦後ずっと続いているとは――。

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中洲を構成する陶片
中洲を構成する陶片
せせらぎの下に埋もれた陶片
せせらぎの下に埋もれた陶片

筆者に発見のヒントを与えてくれた4人家族は、泥だらけで発掘作業をしていた。彼らのお眼鏡にかなう品は一つも見つからなかったようで、倦怠気味のママと子どもたちは、無我夢中でスコップを握るパパに撤退を促していた。
この場所は何度か新聞などで取り上げられている。資産価値の出そうなものはもう残っていないと思われる。

遠くに治水橋が見える
遠くに治水橋が見える

製造期間は約1年

それにしてもなぜ陶器で手榴弾を造ろうとしたのだろう。
通常の手榴弾は金属製だ。内部の爆薬が発火して炸裂すると、爆風と金属の破片が周囲に広がり、数メートル以内にいる人を殺傷する。
鉄製の筒でないと殺傷能力は大幅に低下するのだが、戦争末期の旧日本陸軍は物資不足にあえいでいた。

遺棄現場近くにあった浅野カーリット埼玉工場が製造にあたった。1939年から操業を開始した同工場は、導爆線や発煙筒、曳光弾(えいこうだん)、柄付手榴弾などを製造していた。ドイツに輸出していた時期もあったが、やがて旧日本軍の下請け工場となる。

1944年夏頃から生産を始めたのが「四式陶器製手榴弾」と呼ばれる兵器だ。滋賀県甲賀市信楽で焼かれた陶器が川越まで運ばれ、工場で火薬を詰められ、東京第一陸軍造兵廠川越製造所(埼玉県ふじみ野市)に納入された。
発掘する人が後を絶たないのは、手榴弾が信楽焼で、その価値を認める人もいるからだ。

川越市立図書館で映像資料「陶製『手榴弾』」を視聴した。当時働いていた元工員の証言シーンがあった。

「漏斗で火薬を入れ、割りばしで突く作業だった。(今振り返っても)非能率で幼稚だった」
「むなしいほど爆発力が小さかった」

終戦後、今度は手榴弾の解体作業に人々は駆り出される。一日分の労働で土地400平米がもらえたそうである。

筆者は発掘作業をすることなく、撮影だけ済ませ、先人の苦労に思いをはせながら現場を離れた。

周囲を歩いていると、産業廃棄物等の処理施設や資材置き場が多いことに気づいた。昭和とくに戦中は遠くなるばかりだが、なぜか「廃棄物」でつながっているような気がした。

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