「入社してすぐ〝無茶な仕事〟を任された私。依頼に行った町工場で泣いてしまうと、担当のおじさんが...」(東京都・40代女性)
就職氷河期、ようやく勤め先が決まり...
その頃は就職氷河期で短大を卒業しても就職先が決まっていなかった私は、夕食のときに父と顔を合わせるたびに「今日は職安に行ったのか? どこでもいいから働け」と言われ続けた挙げ句、新聞の求人広告に応募し、都内にある外資系企業の小さな日本事務所に8月から中途採用されていた。
地元で働くという選択肢もあったが、遠距離通勤することを選んだ。地味に地元に埋もれたくないという変な意地もあったかもしれない。
右も左もわからない私に試練として課せられた最初のミッションは、ボトルのキャップを調達することだった。米国から送られてきたはずが、キャップの数が足りないというのだ。
インターネットもまだ普及していない当時、会社の先輩方に教えられながら、電話帳で、プラスチック加工の会社をあ行から当たった。
幸い、あ行のうちに話を聞いてくれるという業者があり、電車とバスを乗り継いで、ここにやってきた。
工場の中では、「スポーン、スポーン」とプラスチックを加工する音が小気味よくリズムを刻んでいた。電話でも話した中年のおじさんが対応してくれた。発注個数、予算、納期を伝えた。