「真夜中に宿から外に出た私。橋から川を見ていたら、いつの間にか横に立ってた老人が...」(長崎県・40代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Kさん(長崎県・40代女性)
若き日のKさんはその日、家族と一緒に下呂温泉に宿泊していた。
疲れていた彼女は真夜中になると、こっそり宿を抜け出して......。
<Kさんの体験談>
もう20年近く前、下呂温泉に行った時のことです。
全てのことに疲れてしまった私は真夜中に家族に内緒でこっそり宿を抜け出し、橋の袂に立ち、ここから飛び降りたら楽になるのだろうかと遙か下にある川を見ていました。
「部屋に入るまで見届けるよ」
その時、「今考えてることやっちゃだめだよ」と、いきなり声が聞こえました。
びっくりして横を見ると、年配の男性の方が私に寄り添うように立っています。
「まず、手すりから手を離そう」
穏やかな声に促され、言われるがままベンチに座ると、その方が今一人旅をしていること、いろんなところでいろんな人に会ったことを話して聞かせてくれました。
最初は戸惑いしかなかったのですが、穏やかな優しい声にだんだん気持ちが落ち着いてきました。
それから一時間程取り止めもない話を続けた後、「さあ、そろそろ部屋に戻りなさい。僕も君と同じ旅館に泊まっているから、部屋に入るまで見届けるよ」とそっと背中を押して促されたのです。
自分でも不思議なほど、自然に...
自分でも不思議なほど、自然に部屋に戻る気持ちになりました。
自分の部屋の階でエレベーターをおり、ドアを開ける前に振り返ると、その方はエレベーターを出たすぐのところで立ち止まっておられ、穏やかな顔でうなずいて、部屋に入りなさいと身振りで伝えてこられたので、頭を下げて部屋に入りました。
家族には気づかれておらず、そのまま布団に入り寝てしまいました。
次の朝、朝食バイキングの会場である大広間に向かう際に、昨晩の方の姿を探して周りを見ました。
すると、会場入り口エリアにあるソファーに、まさにあの方が座ってこちらを見てらっしゃいました。
家族に気づかれないように、頭を下げると、にっこり笑ってうなずいてくださいました。
本当は声をかけてお礼を言いたかったのですが、できなくて......。チェックアウトの時にまた姿を探しましたが、もうどこにもいらっしゃいませんでした。
あの時あの方にお会いしなければ、今の私はいなかったかもしれません。お会いできるなら今もう一度きちんとしたお礼を言いたいです。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
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