京都の女将の元に郵送で「小指」届く 誰の指?何のメッセージ?送り主を直撃してみた
新年早々、京扇子屋「大西常商店」の女将・大西里枝さんのもとに、とんでもないモノが届いた。
どないせぇゆうねんコレ
と呟かずにはいられない贈り物が、コチラだ。
指、である。赤い糸が結ばれていることから、小指だと思われる。
エッ......詰めた小指ってこと!?
どうして彼女の元に、小指が送られてきたのか。誰が送ってきたのか。誰の小指なのか。
Jタウンネット記者は2024年1月12日、送り主の取材に成功した。
運命的な出会いを取引先にも感じてもらいたく...
大西里枝さんに小指を送ってきたのは、岡シャニカマさん。2023年7月にコンテンツの企画・制作を行う「ない株式会社」(所在地:大阪市淀川区)を立ち上げた人物だ。
岡シャニカマさんは、赤い糸を結んだ小指を、年賀状として取引先に郵送したという。
何故そんなことをしたのか。岡シャニカマさんによると、2023年は何もツテのなかったところから、少しずつ人脈が広がり、素敵な仕事にもつながっていった出会いの一年だった。
その"運命的な出会い"を取引先にも感じてもらいたいと考え、年賀状として「運命の赤い糸」を送ることにした。ただ、糸だけではゴミに見えてしまうので「小指」も同封。
岡シャニカマさん:小指が結ばれていない方の系を受け取った人が自身の小指に結ぶことで、離れたところにいながら「運命の赤い糸で繋がっている」ことを実感していただければ幸いです。
......というロマンティックな答えがまず返ってきたが、これは「大義名分」だった。さらに深彫りすると、真相が見えてきた。
「運命の赤い糸」というのは...
岡シャニカマさんが本当にやりたかったことは別にある。
企画の発端は、こんな気持ちだった。
――小指を送りつけたい。
まあ、そうだろう。小指を送りつけたいと思っている人以外、こんな企画思いつかないだろう。
小指は造形にこだわり、自ら製造した。苦労もあった。
というのも、岡シャニカマさんの色覚はC型(もっとも人数が多い色覚タイプ)ではないため、絵の具で指の色をなかなか再現できなかったのだ。
岡シャニカマさん:四苦八苦していたのを妻が見かね、絵の具の調合から重ね塗りまでしてくれたおかげで完成しました。 小指でこだわったのは指の関節部分です。シワの部分にも細い筆で細かく着色しました。(妻が)
造形に2日、着色に2日かかったという。さらに、小指を入れて送る封筒のデザインにも頭をひねった。
岡シャニカマさん:「運命の赤い糸」という大義名分を考えて、それが伝わる文章を考えるところに結構苦労しました。 「指」に関するダジャレを散りばめることで『小指』の存在を匂わせつつコンセプトも伝えられるようにし、イラストも「指が多い」というAI生成イラストあるあるを盛り込み、セリフもよくみると『初詣』ではなく『初指』にしています。
「小指を送りつけたい」という強い気持ち――いや、もはや執念と言うべきかもしれない――よく伝わってきた。
しかし、送りつけられた側の気持ちは?
「大事に飾らせてもらいます~!」その本音は...
岡シャニカマさんに、送った年賀状にどんな反応があったか聞くと、こう答えた。
岡シャニカマさん:送り先からは『最低の特級呪物だ』や『宿儺の指』と称してくれる方が多いのですが、私が『呪術廻戦』を全く知らないので最初は何のことか分かりませんでした。 また、逆に送っていない人から『小指ほしかったです』と言われることもあって驚いています。
送りつけられた「大西常商店」の女将・大西里枝さんにも、聞いた。
ちなみに大西さんは、岡シャニカマさんの会社が23年11月に発売した「裏がある京都人のいけずステッカー」のモデルを務めた人物。表に「どこか意地悪な"いけず"な建前」、裏に「京都人の本音」が書かれた、ユニークな商品だ。
大西さんは岡シャニカマさんからの年賀状を貰い、"表"ではこう思ったという。
「年末の忙しい時にわざわざお手製のおもちゃ作るの大変やったやろうに、大事に飾らせてもらいます~!」
そして、"裏"の本音は......「シンプルに大迷惑」とのこと。
しばらくはキッチンに飾っていたが、家族から苦情があり、撤去することに。
「来年、2025年の年賀状としてシャニカマ氏に送り返す予定をしています」(大西さん)
岡シャニカマさんの来年は、呪詛返しと共に始まることが早くも決定。しかしこれも、来年まで続くご縁を結べたということで、大成功と言えるかもしれない。