「『お母さん、ダメだよ!』若い母親だった私は、新幹線で隣の席のおじさんに叱りつけられて...」(静岡県・50代女性)
シリーズ読者投稿~忘れられない後悔の日~ 投稿者:Sさん(静岡県・50代女性)
Sさんには、悔やんでも悔やみきれない失敗がある。
それは36年前。21歳の若い母だった彼女は、3歳の息子と新幹線に乗っていた時に起こった。
<Sさんの体験談>
今から36年前、3才の息子と新幹線に乗っていました。
私はまだ21才で、とても未熟で、子供が子供を育てているような日々でした。
荷物をまとめていたときに...
私たちの席は3人席の窓際と真ん中。通路側には60代くらいのスーツを着たサラリーマン風の男性が座っていました。男性はずっと新聞を読んでいて、私たちには無関心な様子です。
私と息子は2人で缶ジュースを飲み、景色を見たり、「おばあちゃんちに着いたらカブトムシを捕まえに行こうか?」など、楽しく話したりして過ごしました。
そのうち、私たちの降りる駅につくとアナウンスされ、忙しく荷物をまとめることに。
ところが、小さな子供がいて荷物がとても多く、片手に大荷物、もう片手に息子の手を引くと、缶ジュースが持てません。
私の缶ジュースはカラなので、ぎゅっと潰して荷物のポッケに入れることができたのですが、息子は幼いので飲み切れず、半分くらい残っていました。
どうしよう、もう駅に着く。このジュースは持てない。
そう思って、申し訳ないけど、座席の下の隅に置き去りにすることにしました。
時々、置き去りにしてある空き缶やゴミも見かけるし、今回は仕方ないと思ったのです。
席を立つと、男性が...
息子は、私が座席の下の端っこに置いたジュースを見て、「僕のジュース、僕のジュース」と言っていました。
私は、「いいの。持てないから置いていこう」と息子に言い、席を立ちました。
すると、今まで静かに新聞を読んでいた隣の席の男性に、ビシッと言われました。
「おかあさん。持って行かなくちゃダメだ!子供さんに親がそんな姿を見せてはダメだ。
あんたが子供の手本になってやらなきゃだめなんだよ!」
見知らぬ男性の言ったその正論に、恥ずかしさで顔がみるみる赤面し、逃げたくなりました。
おじさんの言ってることはもっともで、他人に諭された事に顔から火が出るほど恥ずかしく、缶を持って行きたいけど、幼い息子の手を離すわけにはいかない。
今ここでモタモタしていたら、新幹線を降り遅れる。
新幹線のドアが開き、私は息子の手を引いて、逃げるように席を離れました。
その時、おじさんはもう一度、「お母さん、ダメだよ!」と言いました。
でも私は、それを無視して小走りに新幹線を降りました。
あれから年月が経っても...
あれから36年、私は新幹線に乗るたびにその出来事を思い出します。
ずっと後悔と反省の気持ちを持っています。
当たり前のことですが、あれから一度も缶を放置したことはありません。
当時の私は、若い母親なんだから、多少のことは許してもらえるという甘えがありました。
見知らぬ私を正論できっちり叱ってくれたおじさんに、ずっと感謝しています。
私の人格を作る上で、なくてはならない人物です。
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