超絶カオスな「湯かけまつり」に安らぎの「湯めぐり」... 福井・あわら温泉の解放感が凄すぎる!
2024年3月16日、北陸新幹線が福井県まで延伸する。
福井県内に新しくできる新幹線駅は、4つ。そのうち最も東京に近いのが「芦原(あわら)温泉駅」だ。
芦原温泉には一体、何があるのか。23年8月8日、Jタウンネット記者が現地へ向かうと、そこには異様な光景が広がっていた。
JR芦原温泉駅から京福バスで約15分程度――温泉旅館が集まる、えちぜん鉄道・あわら湯のまち駅前のロータリーは、たくさんの人で埋め尽くされていた。そんな人々に大量のお湯が降り注いでいる。
夏の猛暑であたたかい雨が降っていたわけではない。その場に組まれた櫓(やぐら)の上から、その周りにいる人々の手元から、ホース・水鉄砲・桶......様々な道具でお湯がぶちまけられているのだ。
誰も彼もがビッチャビチャ。濡れれば濡れるほどボルテージを上げていく人々。お湯から伝わるものだけでない熱気がその場を支配し、どんどんヒートアップしていく。
一体、何が起こっているというのか!?
あわら温泉の夏の名物「あわら湯かけまつり」である!
お湯をかけまくる一夜
「あわら湯かけまつり」は、温泉が「湧く」と「ワクワク」にちなんで毎年8月8日、9日に行われている"奇祭"(市役所のプレスリリースにそう書かれている!)。そのメインイベントが、あわら温泉のお湯をかけてかけてかけまくる「お湯かけじゃあ!」だ。
7月20日、市が発表したプレスリリースでは「御輿(みこし)にお湯をかけまくる」と説明されていたのだが......実際は「その場にいる人すべて」にかけまくる!!!!!
あわら湯かけまつり実行委員長・土田洋輔さんが駅のロータリーに組まれた櫓の上から「お湯かけじゃあ!」と叫んだ瞬間、それまで大人しくしていた群衆が一気に騒ぎ始め、あちこちに置かれた水槽から汲んできたお湯をぶちまけだして......軽い気持ちで参加した記者はあまりの激しさに度肝を抜かれた。
だって、こんなんなんですよ!?
知り合いも初対面も関係ナシ。盛り上がった人々に、容赦はない。
もう、めちゃくちゃだった。これといった準備もせず、オフィスでの仕事と同じ服装で挑んだ記者も、あらゆる人に笑顔でお湯を発射され、浴びせられ、ぶちまけられ......。
瞬く間に、この通り。
服は体にぺったり貼りつき、大量のお湯が入ったウォーキングシューズからは1歩進むごとにぺちゃぺちゃ音がなる。脱いでひっくり返してみたら、とんでもない量のお湯が出てきた。
しかし、嫌な気持ちではない。それどころか、スカッとして、日々のストレスが洗い流されている。知らない人にお湯をかけられてもちっとも怒りが沸かないどころか、魔法にかけられたかのように何もかもが楽しいのだ!
あの時間は何だったのか。翌9日、記者はあわら湯かけまつり実行委員長・土田さんに話を聞くことができた。
温泉の恵みに感謝!さらに盛り上がる「湯かけまつり」を目指す
「温泉の恵みに感謝するため、神札を飾った御輿にお湯かけをするというのが、本来の目的です」(土田さん)
あわら湯かけまつりは、2006年に初めて開催された。
04年3月、芦原町と金津(かなづ)町が合併し、あわら市が発足したことがきっかけだ。金津町の伝統文化・太鼓と、芦原町の財産・温泉を掛け合わせて、湯かけまつりが生まれた。
23年はあわら温泉開湯140周年を迎えたこともあり、まつりは例年以上に熱気ムンムン。8月6日には新幹線駅となる芦原温泉駅周辺エリア(旧金津町)でも特別に「湯かけ」を実施すると決定し、こんなポスターも作っていた。
大谷翔平選手の二刀流と、旧芦原町・旧金津町の両方で湯かけを行うことを引っかけて"二湯流"と打ち出したのだ。その結果、8日夜の「お湯かけじゃあ!」には「予想以上に人が集まった」と土田さんは語る。
「今後はあわら市から福井県、全国へPRをして、新幹線を通じて『あわら湯かけ祭り』に参加してくれる人が増えたらいいなと......。8日の人出を見て、広報活動を上手く行えば、もっと人が集まるイベントになると確信しました!」(土田さん)
普段のあわら温泉は「派手じゃない、落ち着ける場所」
ということで、日常のモヤモヤを思い切り発散したいという皆さんは、新幹線が延伸して行きやすくなった来年の「あわら湯かけまつり」に是非に参加していただきたい。
え? 「私はもうちょっと落ち着いた温泉のほうがいい」?
そんなアナタにオススメの温泉は......やっぱり、あわら温泉である。
「派手な温泉地ではない分、安心して落ち着ける場所」
そう語ったのは、あわら温泉街にある旅館「グランディア芳泉」の女将・山口由紀さんだ。
「いやいや、あんな激しい祭りをやる場所が『派手ではない』なんてあり得るか?」――初訪問で「湯かけ」の洗礼を受けた記者はそう思ったのだが、実は土田さんも「派手で遊び疲れるようなスポットは少ない、なんか癒される場所」と言っていた。どうやら、普段のあわら温泉は、結構落ち着いた場所のようだ。
そして、これは旅行に行くにはかなり重要なポイントだが、食べ物もおいしい。
あわら温泉では、三国港(坂井市)で水揚げされる魚介類や地元産の新鮮な野菜など、福井の豊かな食材を楽しめる。なにより特に「水がおいしい」。
「水がおいしいので、何を食べても美味しいです。そばや美味しいお酒もできますし、白米を炊くだけでも『おいしいなあ......』ってホッと安心できますね」(山口さん)
元気をチャージして帰ってもらうために
山口さんが所属する「あわら温泉女将の会」では、ただでさえ落ち着けるあわら温泉を、さらに「ウェルネスを感じられる温泉地」にするため、様々な取り組みを行っているという。
女将たちが自ら田植え・稲刈り・仕込みをして作った純米吟醸生貯蔵酒「女将」や、旅館を会場に月1度開催している「朝ヨガ体験」も、その一環だ。
「あわら温泉でウェルネスを感じながら、豊かなおいしいものを召し上がって、温泉に入って、心も体もリセットする。日頃お疲れの方が、ゆっくりして心身ともに充電、元気をチャージして帰っていただきたいのです」(グランディア芳泉・山口由紀さん)
あわら温泉には74本もの源泉があり、宿ごとに泉質や湯温、効能が違う。
そのため、温泉街をまわりながら色んな温泉を楽しむ"湯めぐり"を推奨している。
おいしいご飯とお酒、色んな温泉を楽しみながら、ゆったり癒される――そんな贅沢な時間を過ごせるのも、あわら温泉の魅力なのだ。
激しい「湯かけ」が気になる人も、とにかくのんびり過ごしたい人も、とりあえず1度はこの場所を訪れてみるのがいいだろう。きっといつ来ても、日常から解放されてリフレッシュできるはずだ!
<企画編集・Jタウンネット>