「税金泥棒と揶揄され差別されていた私。初めてのバイト先では、最初の給料支給日に...」(愛知県・50代男性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Tさん(愛知県・50代男性)
児童養護施設で育ったTさんは子供の頃、大きな憎しみを抱いていたという。
しかしある日、近隣の木工作業場におがくずをもらいに行ったことをきっかけに、彼の人生が変わり始めた。
<Tさんの体験談>
今から半世紀近く前、児童養護施設で育った私は、捻くれ者で常に憎しみに溢れ、友達もおらず嫌われ者でした。
そんな私はある日、近隣の木工作業場におがくずをもらいに行った事をきっかけに木工さんから声を掛けてもらうようになり、いつの頃からか自由になる駄賃を目当てに作業場の小僧をするようになりました。
粗野粗暴な木工さん達に...
作業場にいるのは むかし気質で職人堅気の木工さん達。とにかく荒く粗野粗暴で私に対する扱いも生優しくありません。
しかしそれは仕事の中でのことなので道理があり、小僧の私でも骨身に染みて良く分かるものでした。
木工さん達は何も聞きませんでしたが、施設の子供ということは知っていたと思います。
奥さんやおかみさん達も何かにつけて気にかけてくれて、私を我が子と同様に扱ってくれていました。
やがて15歳になった頃、作業場で正式にアルバイトとして雇われることとなりました。木工さん達の口添えもあったようです。
そして、初月給の支給日に社長さんが給与明細を広げて私にこう言いました。
「ここに引かれているのは税金だ。
これでお前も立派な納税者だ。おめでとう」
その瞬間、胸のつかえがすっと取れて言葉にはならない気持ちになりました。
社長さんの一言がきっかけで...
児童養護施設の運営は自治体が行い、原資は税金です。
私たち養護施設の子供は様々な場所で人から「税金で食べている憐れな子供」と噂されたり、「税金ドロボウ」などと揶揄され差別され、快く扱われるのはまず稀なこと。そんなことが、当時は社会的にも普通で、弱者は虐げられたのが当たり前の時代でした。
子供の私には抗うことができず、絶望と屈辱に打ちのめされていたのです。
しかし、社長さんの一言が、私の未来の扉を開けてくれました。
養護施設の子供は16歳になる前に施設から出て自立しなければならないのですが、アルバイトをするには法的に色々な障壁があります。
そのことを知っている木工さん達をはじめ施設の職員さんや役所の方々、そして見ず知らずの善意の人々......。
私の知らない所でたくさんの大人たちが、陰に日向にひとりの児童の自立のため尽力をしてくれていたのを知ったのは、ずっと後になってからでした。
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