なぜ自販機で?何この名前? 謎すぎる「防空壕きくらげ」の正体を、生産者に聞いてみた
2023.07.19 18:00
戦争の時代を忘れないために
防空壕の存在は、土地の購入後に分かった。そこで調査してみると、終戦1年前に発令された学童疎開により常念寺(川崎市麻生区栗木)に来ていた、川崎市川崎区の大島国民学校の39人の女子児童を守るため、日本軍が掘っていたものだと判明した。
「そういう時代をあったことを忘れない為、弊社の代表が『誰もが見に来られるようにこの防空壕を保全して残す』と決意しました」(小山さん)
しかし、どのように発信すればいいかわからず、誰も防空壕を見に来ない。そんな状況が1年ほど続いた。そこで、防空壕を何らかの形で有効活用して発信することに決め、行きついたのがキクラゲの栽培だった。
防空壕の中は、夏は25度、冬は15度程度。キクラゲが成長するのは20度~25度なので、栽培に適していた。また、冬場は少しヒーターを活用することで、夏の期間しか育たないキクラゲを一年中収穫できるように。そうして作られたキクラゲに、「戦争の時代を忘れない」という思いをこめてつけられたのが「防空壕きくらげ」という名前だ。
「購入して帰った人が、家庭で『防空壕って何か知ってる?』という話から、戦争や平和について語り合うきっかけになっていただければ幸いです」(小山さん)
「防空壕きくらげ」の自販機は栽培所の付近だけでなく、川崎市麻生区の麻生郵便局前にも設置されている。