火事のもとになる「厄介者」→キャンプで役立つ「人気者」 今治タオル製造過程の「ゴミ」が華麗なるジョブチェンジ
将来の夢はラグジュアリーブランド
「今治のホコリ」の商品としての特長について、福岡部長は次のように説明する。
「弊社は染色業ですので、色が会社の特徴です。この色を全面に出せる販売形態を考えました。
色を見えるようにするにはやはり、プラスティック製の容器になります。サスティナブル商品ですのでプラスティックを使ってよいのかと悩みましたが、これは後に詰替え用を紙袋で販売してプラスティック容器はずっと使っていただくようにしてクリアしました」
もちろん、こだわったのは見た目だけではない。燃えやすい素材だが、燃焼時間を稼げるように試行錯誤。1ケースにつき40グラムが入っていて、約10グラムで4~5分の燃焼時間を実現している。
「通常の着火剤の多くはライターなどで火を着けると思いますが、今治のホコリは少しの火花で着火しますので、ファイヤースターター(※編注:火打石のように打ち付けて火種を作る道具)で火花を起して、火を育て、焚き火を楽しめます」(西染工・福岡部長)
個人的な趣味から着想を得た「今治のホコリ」という商品がツイッター上で注目を浴びたことについて福岡部長は「こんなに反響があるとは夢にも思っていませんでした。コメントなどで面白い取り組みだと応援していただくこともあり、スタッフの励みになっております」とコメントしている。
ところで、西染工は元々、染色業で、今治のタオルメーカーからの委託加工を受けていた。2018年に今治タオルメーカーの営業権・製織周辺機器の譲渡を受け、2020年、一貫生産体制を構築したという。
タオル業界からキャンプ用品業界というのは、まったく異業種への進出である。苦労はなかったのか?
「私がタオルを製造して販売すると、染色業のお客様と売り先がバッティングしてしまい、私も気を使いながら営業しなければならず、お客様もいい気がしないであろうと考えておりました」
「そのころはコロナ真っ只中であり自分にも時間の余裕があって、趣味のキャンプをよくしていました。そこで、どうせならアウトドアブランドを立ちあげようと考えたのです。キャンプ業界のことは全く分かりませんでしたので、手探り状態で始めましたが運よく今治のホコリをメディアなどに取り上げていただき、飛び込み営業もしやすくなりました」
コロナ禍は逆境でもあったが、キャンプブームという幸運も生み出した。それが、手探り状態で始めた新規開拓の後押しとなった。
同社のアウトドアブランド「THE MAGIC HOUR」立ちあげてまだ一年半足らず。まだまだ認知度は低いとのことだが、「将来の夢はラグジュアリーブランド」と福岡部長は語る。
「『THE MAGIC HOUR』の商品は地球環境に配慮した商品をコンセプトにしております。新商品もそのコンセプトのもと、続けて開発してまいります」(福岡部長)