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火事のもとになる「厄介者」→キャンプで役立つ「人気者」 今治タオル製造過程の「ゴミ」が華麗なるジョブチェンジ

松葉 純一

松葉 純一

2023.07.17 18:00
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2023年6月下旬、ツイッター上で話題になったホコリがある。

それは、今治タオルの工場から出たものだという。製造の過程で出てくる、布のカスだ。

そんな"産業廃棄物"が何故、注目を浴びたのか? それは、カワイイ上に役に立つからだ。

「今治のホコリ」(画像提供:西染工)
「今治のホコリ」(画像提供:西染工)

これは、愛媛県今治市の企業・西染工が開発した商品。その名もなんと「今治のホコリ」で、透明な筒にカラフルなホコリがギュッと詰め込まれている、というものだ。

ツイッター上ではこんな声が寄せられている。

「エコになるし逆転の発想が素晴らしい!」
「これは素晴らしい!笑  win-winの関係ですな」
「そこに使えるって気付いた人、偉いな! 」
「微笑ましくてホッコリするね」
「なるほど、ダブルミーニング。(埃と誇り)」

そして、「吸水性抜群が着火性抜群になってますね」とも。実はこのホコリ、キャンプで使える着火剤なんだとか。

いったいどんな商品なのか? Jタウンネット記者は、西染工を取材した。

カラフルな色、着火の素早さ

タオル産地として名高い今治で染色業を営む西染工では、染色後のタオルの乾燥時にきれいなホコリがフィルターに付着する。その量は1日に120リットルの袋×2袋にものぼるほど。それがキャンプ用着火剤として生まれ変わった。

フィルターに付着したホコリ(画像提供:西染工)
フィルターに付着したホコリ(画像提供:西染工)

産業廃棄物とも言える布カス、ホコリを、キャンプ用着火剤にしようと発想したきっかけは何だったのだろう?

Jタウンネットの取材に答えたのは、西染工の商品事業部長の福岡友也さんだった。

「弊社は染色業という事もあり、大量のエネルギーを消費する業種から、2005年には各部署からの代表者が集まり省エネ委員会を設立しました。長くやっていると、自分たちで出来る活動はやりつくした感があり、私は廃棄物の削減は出来ないかと考えていました」
フィルターに付着したホコリ(画像提供:西染工)
フィルターに付着したホコリ(画像提供:西染工)

廃棄物のホコリは燃えやすく、タオル関連会社では火災の原因となる「厄介者」だった。そして、キャンプが趣味の福岡部長が焚き火をしているとき「廃棄物のホコリが着火剤にならないか」という考えが浮かんだという。火が着きやすいことを逆手に取り、小さな火花からでも火を起こし、焚き火を楽しめないかと考えたのだ。

将来の夢はラグジュアリーブランド

「今治のホコリ」の商品としての特長について、福岡部長は次のように説明する。

「弊社は染色業ですので、色が会社の特徴です。この色を全面に出せる販売形態を考えました。
色を見えるようにするにはやはり、プラスティック製の容器になります。サスティナブル商品ですのでプラスティックを使ってよいのかと悩みましたが、これは後に詰替え用を紙袋で販売してプラスティック容器はずっと使っていただくようにしてクリアしました」

もちろん、こだわったのは見た目だけではない。燃えやすい素材だが、燃焼時間を稼げるように試行錯誤。1ケースにつき40グラムが入っていて、約10グラムで4~5分の燃焼時間を実現している。

今治のホコリは少しの火花で着火する(画像提供:西染工)
今治のホコリは少しの火花で着火する(画像提供:西染工)
「通常の着火剤の多くはライターなどで火を着けると思いますが、今治のホコリは少しの火花で着火しますので、ファイヤースターター(※編注:火打石のように打ち付けて火種を作る道具)で火花を起して、火を育て、焚き火を楽しめます」(西染工・福岡部長)

個人的な趣味から着想を得た「今治のホコリ」という商品がツイッター上で注目を浴びたことについて福岡部長は「こんなに反響があるとは夢にも思っていませんでした。コメントなどで面白い取り組みだと応援していただくこともあり、スタッフの励みになっております」とコメントしている。

「今治のホコリ」(画像提供:西染工)
「今治のホコリ」(画像提供:西染工)

ところで、西染工は元々、染色業で、今治のタオルメーカーからの委託加工を受けていた。2018年に今治タオルメーカーの営業権・製織周辺機器の譲渡を受け、2020年、一貫生産体制を構築したという。

タオル業界からキャンプ用品業界というのは、まったく異業種への進出である。苦労はなかったのか?

「私がタオルを製造して販売すると、染色業のお客様と売り先がバッティングしてしまい、私も気を使いながら営業しなければならず、お客様もいい気がしないであろうと考えておりました」
「そのころはコロナ真っ只中であり自分にも時間の余裕があって、趣味のキャンプをよくしていました。そこで、どうせならアウトドアブランドを立ちあげようと考えたのです。キャンプ業界のことは全く分かりませんでしたので、手探り状態で始めましたが運よく今治のホコリをメディアなどに取り上げていただき、飛び込み営業もしやすくなりました」

コロナ禍は逆境でもあったが、キャンプブームという幸運も生み出した。それが、手探り状態で始めた新規開拓の後押しとなった。

同社のアウトドアブランド「THE MAGIC HOUR」立ちあげてまだ一年半足らず。まだまだ認知度は低いとのことだが、「将来の夢はラグジュアリーブランド」と福岡部長は語る。

「『THE MAGIC HOUR』の商品は地球環境に配慮した商品をコンセプトにしております。新商品もそのコンセプトのもと、続けて開発してまいります」(福岡部長)
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