「草むしり検定の会場...ってコト!?」 滋賀で開催されていた「雑草学会」が謎すぎると話題に→大会内容を聞いてみた
学会――学者や研究者が集い、学術交流を行うアカデミックな場である。
そこでどんなことが行われているのか、外にいる素人にはわからないことも多い。そして、その中でも一段と何をやっているのか想像がつかない学会の存在が、ツイッター上で注目を集めた。
それが、この学会である。
「雑草学会
大会会場」
電柱のそばに設置された看板には、そう書かれている。
「雑草学会」。いったい何なのか。すぐ下に置かれた鉢植えからは、雑草感のある草がモサモサと生えているが、それが本当に雑草なのかもわからない。もしかしたら、すごく深い意味があるのだろうか。会場の方角に歩いているスーツの人に聞けば、何かわかるのだろうか。
謎が謎を呼ぶ光景に、ツイッター上ではこんな声が寄せられている。
「雑草魂で挑む学会かとも思ってしまいそうです」
「草むしり検定の会場...ってコト!?」
「これは草」
Jタウンネット記者は2023年3月28日、この写真を25日に投稿した滋賀県在住のツイッターユーザー・すず姉(@suzu_kinokobook)さんに詳しい話を聞いた。
「いたって真面目な学会なんだろうな」
すず姉さんが話題の看板を発見したのは25日。龍谷大学瀬田キャンパス(滋賀県大津市)内のバス停のそばに設置されていたという。
「『雑草』と『学会』という対照的な2つのワードが並んでいたので面白いな、と思いました。また自分が乗っていたバスに同乗していたスーツを着ていた方々が、この学会の方々だったんだとわかり、雑草学会はいたって真面目な学会なんだろうな、と思いました」(すず姉さん)
また、看板単体ではなく、鉢植えを添えておくセンスにも感心したとのことだ。
雑草学会の正式名称は「日本雑草学会」。前身は、1962年に発足した「日本雑草防除研究会」。作物生産の場面で、農業労働者にとって過酷な労働となっていた雑草制御を合理的に行う技術を確立するために設立された会だ。
記者は30日、幹事長を務める森本正則教授(近畿大学農学部・生物制御化学研究室)を取材した。
「雑草は、農耕地・芝生地・生活環境など、あらゆる場所に発生し、その制御がしばしば問題となります。他方、雑草は劣悪環境の修復など、環境保全にも役立ちうる可能性を持っています。本学会では雑草研究の基礎から応用面で活躍している人々がメンバーとなり、研究発表や情報交換を通して会員相互の向上・発展と農業生産や環境保全へ寄与することを目的としています」(森本教授)
年に一度行われる「大会」も活動の1つ。雑草学会の運営や研究発表に関する事項、シンポジウムや特別講演(雑草学会に関係する研究や情報の提供)などを中心に、開催地の運営委員会が工夫を凝らして内容を決めるという。滋賀で開催された今回は、琵琶湖やその周辺に広がる「ヨシ」に関する特別講演などが行われたようだ。
鉢植えの中の草の正体
なお、すず姉さんが発見した会場への案内は、大会運営委員長である三浦励一准教授(龍谷大学農学部・雑草学研究室)が作製・設置したとのこと。鉢植えはムギを中心にその周りにネモフィラなどを植栽したものだ。
どちらも「雑草」のイメージはない......というか、どちらもあえて植えていくタイプの植物のような気がするが、なぜ採用されたのか? 龍谷大学農学部雑草学研究室のインスタグラムでは、次のように説明されていた。
「今はオオムギやコムギに隠れて見えませんが、もう少しすると、アグロステンマやヤグルマギクの花が咲きだす予定。アグロステンマはラテン語で『畑の花輪』の意味、ヤグルマギクの英名cornflowerは『ムギの花』の意味。どちらももとはムギ畑の雑草だったのです。
じゃ足元に咲いているネモフィラは?すみません、最近流行っているので、つい蒔いてしまいました...」
――ということらしい。ついでに森本教授によると「ムギ畑にネモフィラが生えていれば農業的にはネモフィラは雑草ということになりますね」。
次回の第63回大会は、2024年3月に宇都宮大学で開催される予定。
会員ではない一般の人も参加費を払えば見学できるので、興味をひかれた人は足を運んでみては。