どういうことなの... 「JR九州の運転士専用時刻表」を販売する自販機が、東京に登場していた
「何が売っていても、もう驚かない」
キムチ、もつ、レースのハンカチ、魚卵、ラブレター、カブトムシのおもちゃ――Jタウンネットではこれまで様々な「珍しいものを販売している自動販売機」を紹介してきた。もう「歴戦の珍自販機ハンター」であるという気持ちになっていた。
全くの過信であった。思い上がりであった。
人はどれほど経験を積んでも驚くことができる。そう記者に教えてくれた自販機が、これだ。
黄色い筐体の中には、商品がずらりと並んでいるわけではない。何かが書かれた長い紙が広げられている。
自販機があるのは、東京・有楽町のスキマデパートで開催中の「西九州新幹線開業ポップアップストア」。2022年9月23日の西九州新幹線の開業にあわせてオープンした期間限定ショップだ。
そして、ここで買えるのは「JRの運転士が使う時刻表」である。な、なぜそんなものを自販機で......。
思いのほかグッとくる
記者が訪れた日、自販機で販売されていたのは「運転士用時刻表9/22かもめ45号(新品)」(2枚1セット税込600円)と、「お楽しみ♪運転士用時刻表ガチャ第2弾(新品)」(税込400円)だった。
自販機というだけではなく、ガチャの機能も兼ね備えているらしい。新しすぎる展開だ。
しかも相当人気があるらしく、自販機には「先着ひとり3回まで」と注意書きも。記者はそれぞれ1回ずつやってみた。
電車に詳しくない記者は、この状態では何が何だかよく分からない。
まず、自販機の自販機たる機能で手に入れた「運転士用時刻表9/22かもめ45号(新品)」を広げてみよう。
かもめは、博多~長崎間を結んでいた在来線特急で、西九州新幹線の開業に伴い、2022年に廃止となった。9月22日は、かもめの最終運行日で、「45号」が最終電車だった。きっと運転士も特別な思いで走らせたであろう日の時刻表かと思うと、ぐっとくるものがある。運転士時刻表というだけでなかなかお目にかかれるものではないという感じがするのに、さらにスペシャルではないか。
当たりなの? 当たりとかあるの?
「かもめ」は2枚1セットだったが、「お楽しみ♪運転士用時刻表ガチャ第2弾(新品)」で引き当てたのは、1枚の紙だった。
うーん、分からん。九州に遊びに行ったことはあれど、生まれも育ちも関東の記者は全くぴんとこない。調べてみたところ、JR九州の「篠栗(ささぐり)線」という路線であることが判明した。
ガチャには全27種の時刻表があるらしいが、これは、当たりなのか? そもそもこのガチャに当たりとかあるのか...?
だが、運転士がこのような時刻表を使って電車を走らせているのだと思うと、カッコよく見えてくる。むしろ知らない場所だからこそ、時刻表を持ってこの路線の電車に乗ってみたくなった。
乗ってみたくはなったが......なぜ自販機で「運転士が使う時刻表」を販売しているのか。その疑問は深まるばかり。
記者は居ても立っても居られず、「西九州新幹線開業ポップアップストア」を運営するJR九州商事(福岡県福岡市)を取材した。
「ワクワク感を楽しんで」
同ポップアップストアの担当者によると、時刻表を販売するというのはJR九州にとって初めての取り組み。西九州新幹線の開業や、沿線地域である佐賀県・長崎県を中心とした九州地方、およびJR九州の魅力を発信したいと考え、鉄道ファンや、関東在住の九州に縁のある人をターゲットに自動販売機で商品を販売することになった。
「運転士時刻表自販機」は、週1~2回の補充(概ね毎週金曜午後)を行うが、1週間以内には売り切れてしまうほどの人気商品だという。
また、「何が出てくるか分からないワクワク感で楽しんでほしい」との思いから時刻表の「ガチャ」も実施。ガチャには、今回記者がゲットした篠栗線のほかにも、鹿児島本線、ゆふいんの森、香椎線、筑肥線、佐世保大村線など、JR九州の在来線の時刻表が入っている。
訪問時に展開していたガチャは第2弾(全27種)で、以前には第1弾(全33種)も実施していたが、どちらも大人気だったとのこと。
「これまでになかったおもしろい発想・コンテンツ、そして自動販売機で購入できるという要素もプラスされて、鉄道ファンの方中心に楽しんでいただけることがとても嬉しいです」(JR九州商事・ポップアップストア担当者)
西九州新幹線ポップアップストアは2023年3月上旬まで開店予定。ストアには運転士時刻表以外にも、佐賀・長崎を中心とした九州の名産品や銘菓が買える自販機や鉄道部品が買える自販機も並んでおり、見たことのないオモシロ自販機の宝庫だった。時刻表ガチャで出た路線に乗りに行く旅、なんていうのも楽しいかもしれない。気になった方はぜひ有楽町へ。