虐待から逃れ、夜の街を彷徨う中学生 声をかけてくるのはブルセラ目的のオジサン...行き場のない彼女に1人のホームレスが与えたもの
声をかけてきたのは寄せ集めの格好をしたおじさん
確か、寒くなりはじめていた季節でした。新宿駅の西口ロータリーまで少し時間をかけて歩きましたが、それでもまだ時刻は4時前。始発も動き出していません。
少しでも座りたかった私はモザイク通りの入口にある段差にしゃがみこみました。
その瞬間、どこかに監視カメラでもあったのでしょうか。スピーカーから「そこで座り込まないでください」というアナウンスが刺々しく流れました。
言いようのない腹立ちを飲み込み、私は立ち上がりました。
けれど、どこに行ったらいいのだろう。立ち尽くす私に、声をかけてきたのは見知らぬおじさんでした。
ブルセラや買春目的の男性ではないと思いました。
彼らはきちんとした身なりをしていて、対価の金銭をちらつかせてきます。しかし目の前の男性は、寄せ集めだと一目で分かるちぐはぐな服装にボサボサと伸びた髭を生やしていました。ホームレスなのだろうと分かりました。
「どうした、大丈夫かい。おっちゃんがあったかいコーヒーおごってやるよ」
おじさんはそう言って笑うと、歩き出しました。
家に帰れない子供にとって、飲食の機会はとても貴重です。身の危険があれば走って逃げればいい、駅の明るいところを離れなければ大丈夫。そう考え、私は彼についていきました。