爽快!そして、壮大! 福井・三方五湖をチャリで巡ってみた結果→「地球の歴史」を感じちゃった
最後の湖・三方湖の周りに広がるのは...
茅葺きの船小屋
海山桟橋を出発して水月湖沿いを南下していくと、今回の旅で訪れる最後の湖・三方湖が見えてきた。その西岸には、ちょっと珍しい光景が広がっている。
立ち並ぶ茅葺屋根だ。湖に浮かぶように、水辺から直接柱が伸びていて、壁などはない。屋根の下には、小舟がとめられている。
これは「茅葺きの舟小屋」。有名な岐阜県の白川郷と同じ合掌造りで、かつて農作業のために使われていたものだという。
これも名物!福井の「梅」
ところで、入舟での朝食にも、ドライブインよしだのイカ丼にも、同じものが添えられていたことを、皆さんお気づきだろうか。
「梅干し」だ。
何を隠そう、このあたりは梅の名産地。「茅葺きの舟小屋」も、かつて対岸にわたって梅の収穫を行うための舟を係留していた場所だ。そして、湖沿いの道路を走っていると、道路の両脇には梅林が広がり、「○○農園の梅干し」という看板もちらほら。種が小さく果肉が厚い「福井梅」を使った梅干しは三方五湖湖畔の名産品で、実に江戸時代からの歴史を誇っている。
中でも「紅映(べにさし)」という品種は、全国でも福井県でしか栽培されていない希少なもの。マイルドな酸味と豊富に含まれたミネラル分が特徴で、梅干しづくりには最適な品種だ。
そんな福井梅を使った梅干しや色んな加工食品を楽しめるのが、こちらの「梅の里会館」。
ここで販売されている梅干しは、加工から味付けまで全て同館で行われているこだわりの逸品だ。
梅干しだけでなく、お酒やジュースといったドリンク類、ゼリーやどら焼きやおせんべいといった菓子類など充実のラインアップ。福井梅を味わいたい人は、とりあえず「梅の里会館」に足を運んでおけば間違いないだろう。
ちなみに、記者が同館営農部の村上萌さんにオススメの商品を聞いたところ、「うめドリンク」(120円)を紹介された。
サイクリングで喉が渇いていたこともあって死ぬほど美味しかった!
世界に誇る水月湖の「年縞」...って、なんだ?
梅の里会館を出た後も、梅林に囲まれた道がしばらく続く。梅の花が咲くころにサイクリングすれば、さぞ美しく、いい匂いがすることだろう。
そして、いよいよ2日にわたるサイクリング旅も終わりが近づいてきた。記者が最後に立ち寄ったのは、三方湖の南岸にある「道の駅 三方五湖」。
三方五湖の特産品やお土産などが購入できるので、途中で荷物を増やしづらいサイクリングの最後に来たかったのだ。同駅主任の宇野早希さんによると、おすすめ商品は福井梅の甘露煮が入った「梅どら焼」(210円)と、同駅限定品の「水月湖年縞(ねんこう)羽二重餅」(9個入り590円)。
「『羽二重餅』は分かるけど、『水月湖年縞』って、なに?」
そう思った人もいるかもしれない。その疑問は、道の駅のすぐそばにある「福井県年縞博物館」で解決する。
水月湖の湖底には縞模様の地層がある。これが「年縞」だ。
春から秋にかけてはプランクトンの死骸などが、晩秋から冬にかけては黄砂や鉄を含む鉱物などが降り積もることにより「暗い層」と「明るい層」が交互に堆積するため、「縞」が1年毎に出来ていく。層の中には落ち葉や花粉が含まれ、これを見れば当時の自然環境がどんなものだったのかを知ることができる。また、火山灰の層があれば噴火があったことが分かるなど「かつてどんな自然災害が発生したのか」ということも推測できる、いわば「天然の歴史年表」だ。
そして年縞博物館では、実に約7万年分もの年縞の実物(長さ45メートル)がステンドグラスになって展示されている。
この「約7万年分」という長さは、これまで見つかった年縞の中で世界最長。そのためここで得られたデータは世界中の歴史研究や、発掘された人骨などの遺物の年代測定に活用されているという。年縞博物館で見られる水月湖の年縞は、まさに「世界基準」の貴重な"ものさし"なのだ!
ついさっき見てきた水月湖がどんな湖だったか、景色だけじゃなく「内側」までわかって、感慨深い。
「見ても何がどういうものなのかわからないかも」という人も、安心して欲しい。予約をすれば、館内に常駐しているナビゲーターさんがわかりやすく展示の説明をしてくれる。記者も来館した日はナビゲーターさんの案内で展示を回らせてもらった。
自転車を漕いで良い汗をかき、湖の美しい風景やグルメを堪能し、湖の......いや、地球の歴史にまで触れる。当初想像していた以上に充実した2日間だった。
記者のように「全部盛り」なサイクリング旅をしてみたいなら、福井に足を運ぶべし、だ。
<企画編集・Jタウンネット>