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「圧倒的な廃墟感に負けず、ドンドン進もう!」 夕張にある博物館が、いろいろ尖りすぎてる件

松葉 純一

松葉 純一

2022.09.29 08:00
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2022年9月25日、とあるツイッターユーザーが次のような写真を投稿し、注目を集めた。

「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんのツイートより
「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんのツイートより

そこには、こう書かれている。

「圧倒的な廃墟感に負けず ドンドン進もう!」

「圧倒的な廃墟感」とは、一体?

気になって仕方ない表現に、ツイッター上では7300件を超える「いいね」が。投稿者の「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんも「いや、これから何見せられんだよ」とつぶやいている。

この先には何が待ち受けるのか。Jタウンネット記者は、この案内板の設置者である「石炭博物館」に話を聞いた。

トイレ跡、ゲームセンター跡、シャッターの閉まった土産店...

投稿者「図書室のyasu」さんによると、案内板を見つけたのは、9月25日の午前中、北海道夕張市でのこと。3泊4日の北海道旅行中に、夕張市炭鉱博物館に訪れたときのものだという。

記者は同館に電話して、この案内板について聞いてみることにした。取材に応じたのは、館長の吉岡宏高さんだった。

吉岡館長は、「ドンドン進もう!」という案内を考えたのは、実は自分だと告白する。

「あの案内板があるのは、大駐車場です。石炭博物館はまだ250メートルほど先にあり、徒歩で約10分かかるのですが、観光客の皆さんは、なぜか(笑)、ここで引き返してしまわれるのです」
「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんのツイートより
「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんのツイートより

案内板に従って進んだ先にはかつてのレジャー施設のトイレ跡やシャッターの閉まった土産店、ゲームセンター跡などがあり、「いささか廃墟感が漂っています」。

「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんのツイートより
「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんのツイートより
「そこをなんとか引き返さないで進んでもらいたい、という思いで、設置しました。おかげで博物館の入館者は随分増えてきましたが......」(夕張市石炭博物館・吉岡宏高館長)

展示の導入は「夕張の財政破綻」

博物館と立坑櫓、「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんのツイートより
博物館と立坑櫓、「図書室のyasu」(@Library_Yasu)さんのツイートより

夕張市石炭博物館は、かつての炭鉱跡地を利用したテーマパーク「石炭の歴史村」の中核施設として1980年に開館。北海道の石炭産業、そして炭鉱と共に歩んできた夕張市の歴史を伝える施設だ。

2階の展示室の導入はなんと「夕張の財政破綻」というテーマだ。

「全国最低の行政サービス 全国最高の市民負担」という文字が見える(夕張市石炭博物館webサイトより)
「全国最低の行政サービス 全国最高の市民負担」という文字が見える(夕張市石炭博物館webサイトより)

映像や写真、当時の日用品などの展示によって、破綻へと至る激動の動きが、生々しく描かれているそうだ。また、立坑ケージ風味のエレベーターを降りて向かう地下展示室では、鉱山で使われていた機械や器具の展示、マネキンを使った当時の作業の様子の再現を見ることができる。

「現在は約7000人ですが、1960年には夕張市は人口12万人だったのですよ。石炭産業は、日本のエネルギー確保のために、いかにがんばってきたかということを、もう一度理解してもらいたいですね。博物館の展示をご覧いただければ、それが分かると思います」と、吉岡館長。

話題の写真を投稿した「図書室のyasu」さんは、「圧倒的な廃墟感」の案内板にひるみつつ、勇気を出して一歩踏み出し、そして博物館に辿りついた。館内の展示で最も印象的だったのは、炭鉱末期に導入されていた「ドラムカッター」(炭層を削って石炭を採掘するための機械)の実演運転と解説だという。

「近代的な採掘方法が導入されたにも関わらず、結局それを扱うためのコストが高過ぎたという話が深く心に残りました」(「図書室のyasu」さん)
ドラムカッター、写真は夕張市石炭博物館webサイトより
ドラムカッター、写真は夕張市石炭博物館webサイトより

石炭の歴史を振り返ることも、有意義な旅となるに違いない。廃墟感に負けず、あと250メートル前進してみてはいかがだろう。

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