何ひとつわからん... スーパーに並ぶ「おきゅうと」、妻に正体を聞いてみたら「えごみたいなもん」←結局ナニモノ?
スーパーの食品売り場に、見たことも聞いたこともないものがあった――そんな投稿が、ツイッターで注目を集めている。
ツイートに添えられていたのは、こんな写真だ。
こちらは、東京都出身で長野県に移住したツイッターユーザー・HAL(@HAL1986____)さんが2022年6月11日に投稿した一枚。
「おきゅうと」と書かれた緑色っぽいコンニャクみたいな食べ物がたくさん並んでいる。薄くスライスされているものもあれば、塊状のものも。パックには「刺身用」と書かれている。
HALさんはこの食べ物が何かわからず、妻に尋ねてみた。すると――
「スーパーで『おきゅうと』という謎の食品を見つけて、『これなんだろ』って嫁に聞いたら、『えごみたいなもんだと思う』ってさらに分からない単語で説明された。
ナンモワカラン」
返ってきた答えは「『えご』みたいなもん」......知らない食べ物を知らない食べ物で例えられて、HALさんは余計に混乱してしまったようだ。
海藻を使っている?
Jタウンネット記者は14日、当時の状況についてHALさんに話を聞いた。「おきゅうと」と遭遇したのは11日のお昼前、場所は長野県長野市にある「スーパー原信 若里店」だった。
「いつも通り食材の買い出しで妻とスーパー内を回っている時に見つけました。ぱっと見で『何か海藻を使ったものだろう』とは思ったものの、味など想像がつかなかったのと、名前も面白いなと思いました。なので、長野が地元の妻なら詳細を知ってるかなと思い聞いてみたら、さらにわからない単語が出てきてしまったのでとても困惑しました」(HALさん)
「おきゅうと」という存在、そしてHALさんと妻のユニークなやりとりに対し、ツイッター上ではこんな声が寄せられている。
「どっちもわからんにゃ」
「刺身用ってことは他の食べ方もあるってことですよね?」
「なんだろ...珍百景登録されそうな名前」
結局、その日は正体が良くわからなかったので買わずに帰ったというHALさん。しかし後日、妻が買って帰ってきたので酢味噌で食べてみた、とツイートで報告。
ただ、あまり美味しくはなかったとのことで、「僕の好みでは無かったようです」と呟いている。
結局、「おきゅうと」や「えご」とはどんな食べ物なのか。それは、農林水産省が運営するウェブサイト「うちの郷土料理」上で詳しく解説されている。
結局どんな食べ物なの?
「うちの郷土料理」はその名の通り日本各地の郷土料理のルーツやレシピなどを紹介しているページ。「おきゅうと」については、次のように説明されている。
「『おきゅうと』は、海藻であるエゴノリを干し、煮溶かして小判型に固めた食べ物で、海に面した福岡県ならではの郷土料理である」
「福岡市内ではエゴノリを一枚一枚巻いて販売されており、食べる際に切りタレをかけて食べる」
「何か海藻を使ったものだろう」というHALさんの推察通り、「おきゅうと」とはエゴノリという海藻を加工した福岡県の郷土料理。地元ではコンビニやスーパーでも手軽に入手でき、飲食店や学校給食でも提供されるなど、通年食べられる料理のようだ。
一方「えご」については、長野県(北信地域・中信地域)の郷土料理として「えごの酢味噌あえ」が紹介されている。HALさんの妻が「えご」を知っているのも納得だ。
サイト上には「『えご』は『エゴ草』という海藻を煮溶かして固めたもので、新潟県などにも伝わる郷土料理」と記載されていた。
佐渡では「いごねり」
そこで、新潟県の郷土料理一覧を見てみると「いごねり」という料理のページが。
日本海で採れる海藻「いご草」で作る佐渡の郷土料理で、乾燥させた「いご草」をやはり煮て練って固めたもの。新潟地方では、長野と同じ「えご」と呼ばれる。ゴールデンカムイの読者には、お馴染みかもしれない。
では、「おきゅうと」と「えご」や「いごねり」は同じものなのか。「いごねり」のページにはこんな記載があった。
「製法が少し異なる類似の食品が各地にあり、『いごねり』は九州の『おきゅうと文化』が北前船や漁船の往来により博多から能登半島の輪島を経由して佐渡に入り、越後各地へと伝わったといわれている」
HALさんの妻が言った「おきゅうと」は「えごみたいなもん」というのは、かなり正確な表現と言えるだろう。
ちなみに、福岡の郷土料理である「おきゅうと」が長野県のスーパー「原信」で売られている理由について、Jタウンネット記者が16日、原信ナルスオペレーションサービス(新潟県長岡市)の店舗運営部・井上剛さんに聞いたところ、
「(販売してほしいという)お客さまからの要望があったから」
とのこと。また、「おきゅうと」だけでなく「えご」も店頭に並べているそうで、いずれも通年で購入できるそうだ。