「飛び乗った電車の窓から見えた、呆然とした顔の父と母。幼い私は不安のあまり、とうとう車内で...」(兵庫県・30代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Kさん(兵庫県在住・30代女性)
約30年前のその日、Kさん家族はかつて兵庫県宝塚市に存在した遊園地「宝塚ファミリーランド」に向かっていた。
途中、阪急・十三駅で乗り換えのために一度電車を降りたところで、Kさんは両親とはぐれてしまったという。それでも何とかホームに辿りつき、出発間際の電車に乗ったのだが......。
<Kさんの体験談>
30年ほど前、当時小学校低学年だった私は、家族と宝塚ファミリーランドに遊びに行く途中、乗り換えのため阪急の十三駅で降りました。
乗り換えの道中は子供にとって長く、乗り物酔いが酷かった私は、急ぐ家族に追いつこうと必死。それでも、はぐれてしまったのです。
吐きそうになりながらも耐え、遠くに家族が見えたホームまで急ぎ、出発間際の電車に飛び乗りました。
家族はこの電車に乗っている。そう思っていた私は置いていかれずに済んだ、とホッとしたものです。
しかし、それも束の間。動き出した電車の窓の外に唖然とした顔の父と母が見えました。
焦りと不安、乗り物酔いで...
家族はホームで私を待っていたのです。幼い私はそれに気づかず、1人で電車に乗ってしまったのでした。
焦りと不安、元々の乗り物酔いが合わさって、私は込み上げる吐き気に堪え切れず、とうとう電車の中で戻してしまいました。
周りの乗客が「うわ!」と離れていきます。私は羞恥心と恐怖心で泣き出してしまいました。
吐しゃ物まみれで、臭いも凄かったと思います。
でも、そんな私にある中年女性が優しく声をかけてくれました。
「どうしたん?大丈夫?お母さんは?」
次の駅で降り、トイレで汚れた服を...
私は泣きながら家族と離れてしまったことを話しました。
すると彼女は嫌な顔もせず「気分わるかったんやね。次の駅で降りて、服綺麗にしよか」と言って、次の駅で代わりの服を買って、駅のトイレで先ほどまで着ていた服を洗ってくれたのです。
「お父さん、お母さんと会えるまで一緒におったげたいけど、私も用事があるから駅員さんに言ってるからね」
その後、彼女はそう言って去っていきました。
彼女が駅員さんに伝えてくださったおかげで、私はすんなり家族と会えたことを覚えています。
今、私があの時の女性と同じくらいの年代となり、改めて勇気と優しさを実感します。絶望のどん底に落ちた小さかった私を助けてくださり、今でも心から感謝しています。
名前も分からず直接の恩返しはできないのですが、出会う人すべてをあの時のあなたと思って、親切を返すように心掛けています。本当にありがとうございました。どうかこの思いが伝わりますように。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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