「通学中に貧血を起こし、路上に座り込んだ私。気を失いかけながら上を向くと、見知らぬ男の人がいて...」(群馬県・60代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Cさん(群馬県・60代女性)
Cさんは子供のころからよく貧血を起こしていたという。小学校の朝礼、中学への登校中など、いろんな場所でめまいに襲われていた。
高校に通うようになってもそれは変わらず、その日は駅から学校に向かう途中で、立っていられなくなってしまった。
<Cさんの体験談>
もう50年近く前のことです。私はよく貧血を起こしていました。
小学生の時には朝礼の度に倒れて保健室の常連になり、中学生の時には学校まで辿り着けないことも多々あり、高校生になっても治ることはなく、あちこちでめまいを起こす日々。でも、女性には貧血はつきものと勝手に判断して、当たり前に受け入れていました。
「おはようございます」と頭を下げても貧血を起こすくらいでしたから、毎日毎日そして何年もそんなことを繰り返しているともうそれは日常になってきます。下げた頭をゆっくり上げながら元に戻る術を得たりして、周囲の人には気付かれないようにやり過ごせるようになっていたのですが......。
貧血で周りがぼやけて......
高校に通い始めてから、私は引っ越しをすることになりました。学校へはこれまでの 倍以上時間がかかる上に。乗り換えもしなければならない遠方です。始発の電車に乗らなければ遅刻になってしまうので、朝起きることが大変な私にとって過酷な毎日の始まりです。
駅から学校までは徒歩で20~30分。その日もいつものようにフラフラの状態で歩いていると、途中で貧血を起こし、周りがぼやけて見えなくなってきました。
これまでもひどい貧血のときは立っていることも出来ずにうずくまってしまったり、それでも駄目なときは時も場所も選べず倒れてしまったりしていましたので、「このままでは倒れてしまう」と思いました。
自分が倒れて救急車を呼ばれたり大騒ぎされたりする様子が走馬燈のように頭の中を駆け巡ります。
道路で倒れては駄目だ、と取りあえずその場にしゃがみ込み、壁に寄りかかって静かに目を閉じていたその時です。誰かが何か言っているのが遠くに聞こえてきました。もう倒れる寸前で気を失いかけていたのだと思います。
そ~っと上を向くと、男の人が居ました。
横になれて救われた
今となってはうろ覚えですが、「どうしたの? 具合悪いの?」と聞かれ、私は頷くのがやっとでした。
男性はそんな私を手招きしてそっと見守りながら、寄りかかっていた白い壁のビルの通用口へと連れて行きました。
その時に彼から、「少しここで休んで行きなさい」と言われた気がします。
壁にくっついて長椅子が置いてあったので、私はそこに横になりました。それでとても救われて、気がつけばぐっすり眠っていました。
言われるままに横になった時に、「落ち着いたら声をかけずに行きなさい」と言われていたので、若かった私はお礼を伝えることもなく目覚めてすぐに学校に向かいました。
私がいたビルは、学校への近道で使う狭い路地にあり、時代が時代なら「なんて危ないことを! 知らない人について知らないビルに入って寝てしまうなんて!」と思ってしまいますよね。
後から、そこはなんの会社なのかなと気になって見に行ったら有名な銀行でした。そっと、私に一切触れることなく出入り口近くの長椅子で休ませて、休んだらそのまま行きなさいと言ってくれた、気遣いの素晴らしいあのときの方。
私の貧血はちょっと休むと元気になるので、あなたのご厚意は最高の処方箋でした。
もう50年近く経っていますが、忘れたことはありません。大変遅くなってしまいましたが、ありがとうございました。
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