おじさまモデル?いいえ、「商店街のオッサン」です。 神戸の街を盛り上げる「アホな企画」に大反響
――2022年春、おしゃれな街・神戸で大きな注目を集めた「オッサン」たちがいた。彼らである。
ちょっと強面な渋いオッサン、柔和な笑みをたたえた紳士っぽいオッサン、ちょい悪系オッサン、カジュアルオッサン、などなど。「OSSANS(オッサンズ)」というタイトルの下で、様々なタイプのオッサンが手に花を携えている。
表情もポーズもファッションもばっちりキメた彼らの傍らに添えられているのは、
「主役、オレ」
「意外に味わい深い、エエ男」
「最高の素材、最高の技術、最高の天然パーマ」
なんてイカしたキャッチフレーズ。
書店に並んでいそうなデザインに「ふ~ん、こんなミドルエイジ向けメンズファッション誌があるんだ~!おじさんモデルにもいろんな人がいるんだな~」。そう思った読者もいるかもしれない。いや、きっとみんなそう思っているはずだ。間違いない。
しかし!なんと! 彼らはファッションモデルでもなければ、「OSSANS」なんて雑誌も存在しない。
これは、神戸で働くごくごく普通のオッサンたちが、地元を盛り上げるために「背伸び」した姿なのだ!
神戸の街を「盛り上げたい」思いで
ファッションモデルのようにキメたオッサンたちは、神戸の商店街の人々や、商店街の振興を目指す市の職員など。「おしゃれ」と言われる神戸の街を日々形作っている面々と言っていいだろう。
そんな神戸では3月26日と27日に大規模なファッションイベント「神戸コレクション2022 SPRING/SUMMER」が開催された。「阪神・淡路大震災後の神戸の街を元気にしたい」という思いから2002年にスタートした、地元民にとって特別な催しだ。
商店街のオッサンたちと神戸コレクションは、実は無関係ではない。プレスリリースによると、彼らはこれまで神戸コレクションの企画チームからイベント実施について「協力をお願いされる」立場だった。
しかし、今年のオッサンたちは一味違う。
「今年は逆に自分たちから仕掛けていこう、盛り上げていこう」
そう考えた彼らは、おしゃれの祭典・神戸コレクションに「便乗」して、自分たちもおしゃれに「大変身」してみたのである!
地元の美容室に協力してもらい、神戸のイメージアップのために私服でドレスアップ。企画の公式サイトには、そこに至るまでの彼らの熱い「地元愛」が語られている。
「神戸コレクションには呼ばれてないけど、モデルになった気分で今回のテーマである『カッコイイは人の中にある』を体現しました。
神戸コレクションの今年のテーマ『花』を取り入れたスタイリングで、普段とは違う一面を神戸の皆さんに見て楽しんでいただき、商店街と神戸の街が少しでも元気になればいいなという思いがあります」
「街のアホなオッサンたちの活動が少しでも伝われば」
「オッサンズ」の一人で、神戸三宮センター街の副会長かつ同商店街でファッション専門店MACを経営する植村一仁さんは、今回の企画についてプレスリリースにこんなコメントを寄せている。
「最初に企画をいただいたときに、『なんてアホな企画だろう』と正直思いました(笑) 同時に街にいる我々は様々な場で取材を受けたりはするので、まちづくりを真面目にお伝えしてきた気がします。
ただ、もっと自分たちが楽しんでる(実は相当恥ずかしいですが(笑))、街のアホなオッサンたちが街で色々な活動をしているので、少しでも皆さんに伝わるきっかけになればと思っています。
我々の商売の形・商店街のあり方は時代とともに変化しています。三宮、元町の街も大きく変化していきます。そうした中で、より多くの方々が楽しんで過ごせる街を創っていきたいと思います」
企画には、植村さんの他にも「若い世代にも自分たちのお店を知ってほしい」と老舗の社長やオーナーも参加し、ユーモアをきかせたお店の宣伝もポスター内に盛り込んでいる。また、商店街の復興と活性化を目指す神戸市経済観光局商業流通課の職員もオッサンズの一員だ。
オッサンたちが愛する地元のために「背伸び」してみた様子はポスターになり、神戸・三宮商店街の事業者有志チームと、地方の価値を開拓する企業「quod」(本社・東京都港区)、丸善ジュンク堂書店(本社・東京都中央区)の企画「神戸三宮・元町の商店街のおじさん達をカッコよくしてみたポスター展~ OSSANS(オッサンズ) ~」として3月26日から約2週間ジュンク堂書店三宮店で展示された。また、4月1日から約1週間は神戸三宮のショッピング街「さんちか」にも掲示され、地元で大反響を呼んだという。
企画を制作したquodによると、
「OBACHANS(おばちゃんず)もやってほしい!」
「こういう元気が出る企画いいね 最高」
「地域活性といっさい謳わない、ただただ面白い大人たちが並んでいる」
「誰か分からないほど見違える!」
などの声が寄せられており、他の地域でもやりたいという希望も上がっているそうだ。
もしかすると今年は全国各地で、輝くオッサンたちが見られるかもしれない!?