「喉がカラカラなのにお金もない。兄に訴えると『ちょっと待ってろ』と戸の開いてるもつ鍋屋に入り...」(福岡県・40代男性)
あの味は今でも忘れていません――。
今回ご紹介するのは、福岡県在住のMさん(40代男性)が小学2年生の時の体験した出来事。小学6年生の兄とバスに乗って釣りに出かけた帰りに、喉がカラカラに渇いてしまったという。
でも、お金を使うと帰りのバスに乗れなくなってしまうという状況で......。
<Mさんの体験談>
今から30年ほど前、私が小学校2年生で兄が小学校6年生の頃の出来事です。
兄は釣りが大好きで、私もよく一緒に近所の川に魚を釣りに出かけていました。その日は、兄が市バスに乗って釣り堀に出かけるというので、私も一緒に連れて行ってもらうことに。
バスに乗るのも初めてだったので、ドキドキワクワク。バスの窓から見える景色はキラキラ輝いているように思えました。
目的地のバス停が近づき、下車する合図のボタンを「押していいよ」と兄から言われ、あのボタンを押した時の嬉しさは今でも覚えています。
釣り堀では3時間ほどを過ごし、帰りのバスを待っている時です。
私は喉が渇いて渇いてしょうがなくなってしまいました。
バスが来るまで30分以上
私はお金を持っていなくて、兄が持ってきたお金は往復のバス代と釣り堀代のみ。
近くに公園などもなく、あるのはバス停の横にある自動販売機だけ。飲み物を買いたくても、買うと帰りのバス代が足りなくなってしまいます。
バスが来るまで30分以上あって、兄に喉が渇いたとずっと言っていたと思います。
その時、兄が道を挟んで向かい側のもつ鍋屋さんの戸が開いていることに気づきました。
「ちょっと待ってろ」
兄はそう言うと、そのもつ鍋屋さんに入っていきました。
今も忘れられない「あの味」
それから5分ほど経って、お店から出てきた兄が私に手招きをして「こっちにおいで」と言うので、私はおそるおそる中へ。
お店の人が2人いて、カウンターの席につくように促され、兄と並んで座りました。
すると、奥からおかみさんと思われる方がカルピスを持ってきてくれたのです。
おかみさんの話では兄が、
「喉が乾いている弟がバス停で待っているけどお金がないから、お水をもらえませんか?」
と頼んでくれたそうです。それでお水ではなく、カルピスを出してくれて...。あのカルピスの味は今でも忘れていません。
大人になったら2人でお礼を言いに行こうと話しながら帰った記憶があります。
兄は病気で亡くなってしまい、2人でお店に行く事は叶いませんでしたが、近いうちにお店にお伺いして、お礼を伝えたいと思います。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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