「平和」という名を背負い続けて76年 改めて知っておきたい「Peace」が愛される理由
なぜ、ピースは今も残るのか
ピースが今も存在し続ける理由。その答えを求めて筆者は、たばこの歴史と文化に詳しい「たばこと塩の博物館」(墨田区)の学芸部長・鎮目良文(しずめ・よしふみ)さんのもとを訪れた。

鎮目さんに筆者の疑問をぶつけると、こんな言葉が返ってきた。
「ピースっていう言葉の重みですよ」
ピースの販売が始まったのは、1946年1月。終戦から約5か月が経った頃だ。発売日にはたばこを求める人で行列もできていたという。

戦争末期の1944年、製造能力の低下によりたばこは一時「配給制」になった。戦後も1950年までは制度が続くが、その中でピースは戦後初の自由販売たばことなる。つまり、現在のようにある程度自由に好きな量が買える数少ない銘柄のひとつだったのだ。
「当時たばこは専売品だったこともあり、国民の身近なところにある嗜好品です。なので、時代を反映してきた商材でもあります。
ピースが発売されたのは、1946年1月の終戦直後。行列ができるほど人々がたばこを求めていたということでもありますが、それだけではないと思います」(鎮目さん)

ピース、つまり「平和」という大胆なネーミングは公募で決まったもの。終戦からわずか2か月しか経っていない1945年10月にネーミングとデザインの募集をすると、1か月の間に約6万件の応募があったという。
そして審査の結果、1位が「ニューワールド」、2位が「ピース」という結果になった。
「1位は『ニューワールド』でしたが、そのデザインが当時の印刷には適さなかったので、2位の『ピース』が発売することに。この結果から見ても、当時の人々が『新しい時代』と『平和』に求めていたものが大きかったのだと思います」(鎮目さん)