子供達には怖すぎない...? 足立区の公園に大迫力の「巨大鬼」が存在する理由
東京・足立区に巨大な鬼が居る場所があるらしい。
一風変わったオブジェクトに目がないJタウンネット記者はある日、そんなうわさを聞き付けた。
その場所とは、埼玉との県境のすぐ近く。日暮里舎人ライナー・見沼代親水公園駅から徒歩10分ほどの「舎人いきいき公園」である。
知ったからには、この目で見なくてはなるまい。記者はさっそく、現地を訪れた。
さて、鬼は一体どこにいるのか......というのは、探すまでもない。
なぜなら園内に入るとすぐに、そいつが目に飛び込んでくるからだ。
めちゃくちゃデカい鬼がいた
胸部から上の部分しか地上に出ていないのに、身長170センチの筆者よりもはるかに大きい!
真っ赤な体で牙をむき出しにして、こん棒を持つ鬼の迫力はすさまじい。「一応ここ公園だよね?」と誰かに確認したくなってしまうほどの存在感だ。
もちろん、この鬼はれっきとした遊具で、ちゃんと遊べる。背後に回ると階段がついていて、口から外に出る滑り台になっている。
赤い鬼の、真っ赤な体内に進んでいくという恐ろしすぎるシチュエーションである。こんなおっかない遊具はなぜ存在しているのか。何かヒントになるものがないか園内を散策していると、公園の案内板を発見。
そこには、こう書かれている。
「日本昔話の舞台~にぎわいの公園~」
どうやら、日本の昔話をモチーフにした公園だったらしい。
地元に伝わる「昔話」を教えるために
Jタウンネット記者が3月15日、足立区都市建設部みどりと公園推進室パークイノベーション担当課の職員に取材したところ、同園ができたのは1983年1月。当初は「舎人五号公園」という名の、区画整理でできた遊具もない公園だったという。
そして、93年に現在の名前に改め、案内板にあるような「日本昔話の舞台」をモチーフにした公園に生まれ変わった。
「平成5年(1993年)に、遊具やスポーツができる広場を整備した際に、地元に伝わる昔話に愛着を持つ住民の要望を生かして改修したため、昔話がモチーフの公園になりました。
改修当時、地元から、『毛長川伝説のあるところだから、おとぎ話を題材にすればいい。おばあちゃんやおじいちゃんが孫に昔話を教えることができるような公園にしてほしい』との声が寄せられたそうです」(足立区パークイノベーション担当課の担当者)
毛長川は、舎人いきいき公園から歩いて数分の場所を流れている川のこと。ここにまつわる「毛長川伝説」がどういう話なのかも担当者は説明してくれた。
「昔、舎人の長者の息子に、毛長川の向こう側の長者の娘が嫁入りをしました。この娘の黒髪はつやつやと輝き、けなが姫と呼ばれていました。
ところが、娘は嫁入り先と折り合わず、川に身を投げてしまったのです。それから川は荒れ狂うようになり、村人は祟りだと恐れました。その後、近くで長い長い髪が流れているのが見つかり、これを祀ったところ異変は収まったそうです。それ以降、この川は毛長川と呼ばれるようになったといいます」
古くからの言い伝えがある場所だから、昔話をモチーフにした。住民の郷土愛が伝わる良い話である。
しかし、だからといって物事には程度がある。鬼の造形に迫力がありすぎではないだろうか。
鬼の怖さにも理由があった
なぜ同園の鬼はこんなにも怖いのか。その理由も聞いてみると、
「舎人いきいき公園の大鬼は、大人になっても忘れないでほしいとの願いから、インパクトのあるものが採用されたようです」
と担当者。確かに、地元に思い出の場所があるというのはうれしい。ただ、大人になって振り返る分にはいいかもしれないが、肝心の子どもが怖がっていないのだろうか。
「開園当初のインタビューで、小学校2年生の女の子2人が『鬼は怖くない。いつも遊んでいる。子供たちの間では、鬼の遊具で遊ぶのが流行っている』と答えていました。
初めて利用する子供は驚き、『コワイ~!!』と最初は近寄らないこともありますが、ほかの遊具で遊んで場に慣れてくると、鬼のすべり台にも挑戦し、帰るころには鬼も公園も大好きになって帰っていくのがほとんどかと思います」(足立区パークイノベーション担当課の担当者)
なお、鬼はしっかり足立区の役に立っているらしく、担当者は、
「桃太郎は年齢を問わず親しんできた昔話であり、そこに登場するような真っ赤な鬼で、かなりインパクトのある姿なので、区の広報やPRにもたびたび登場するほどの人気ぶりです」
とも説明した。
世代を問わずに人気を集める舎人いきいき公園の鬼。今後も地域のシンボルとして大活躍するのだろう。