駅にでっかく「推しの広告」が出せる...だと? 新大久保に設置された「募集看板」に反響→使い方を聞いてみた
町中のそこかしこに設置されている「広告」。時には出されるものが無く、枠の中に「募集中」なんて書かれていることもある。
そうなると消費者の側としてはあまり意識することのない存在なのだが、現在ある駅に出されている「広告募集の横断幕」が非常に目をひくと、ツイッターで注目を集めている。
それこちらだ。
これは、ツイッターユーザーのあらいちゅー(@araichuu)さんが2022年3月15日に投稿した写真。同日朝、東京・新大久保駅で撮影したものだという。
アイドルのような金髪の男性が指ハートをしているイラストの周りには、こんな文字が書かれている。
「え!? ここに推しの広告が出せるの!?」
広告といえば、新商品のアピールやアーティストのイベントの告知をするために企業が出すことが一般的だが......「推しの広告が出せる」とは一体どういうことなのか?
Jタウンネット記者は3月16日、広告募集主である西武鉄道の広報担当者に取材を行った。
「推しの広告」は韓国だと一般的
そもそも新大久保にある横断幕は、どういった広告が出ることを想定して募集をしているのだろうか。担当者はこう説明する。
「アイドルや芸能人などを推しているファンの方々による、推しのお誕生日やCDリリースといったことをお祝いする広告などを想定しております。
広告主としては、各種条件はございますが、ファンクラブなどの団体のほか、個人の方でも可能です。なお、応援の対象は、著名人や芸能人など、一般認知されていると判断できる場合に限ります」
つまり、「推し」を広告の枠を使って応援できる、ということらしい。
実はこのような、ファンが「推し」である芸能人のために、「応援のための広告」を出すという行為は、韓国で盛んにおこなわれている。21年3月31日付の「現代ビジネス」の記事によると、韓国ではファンが推しの誕生日などに地下鉄の駅で大きな広告を出すのが当たり前で、これを「センイル広告」と呼ぶそうだ。
あらいちゅーさんの投稿にも、「海外のKポアイドルのファンは駅広告とか誕生日記念によくやりますもんね」「お!? 韓国の流れが日本上陸!?」といった反応が寄せられていた。
西武鉄道が新大久保で横断幕を出したのも、韓国のセンイル広告文化の影響を受けてのようで、
「韓国での応援広告ブームを参考に、西武鉄道でも応援広告を出せるということを広く認知いただくために取り組みを始めました。
新大久保駅周辺で横断幕を掲出した理由についても、応援広告ブーム発祥の地とも言われる韓国のカルチャーに触れることができる新大久保は、応援広告との親和性が高い場所であると考えたためです」(西武鉄道広報部の担当者)
ちなみに西武鉄道では、21年に池袋駅に掲出されているポスターに推しへのお誕生日祝いメッセージを書いた付箋を貼り付けられる「ポストイット企画」を行うなど、応援広告の実績があるという。
実際に広告を出す場合はどうなるの?
新大久保駅での広告募集は2月28日に掲出が始まり、見た人から「応援広告」を出したいという相談がすでに数件寄せられているという。
では、広告を出したい場合、どういった手順を踏めば良いのか。
まず気になるのが、広告を出したい芸能人の肖像権や著作権の問題だ。いくら応援とはいえ、顔写真などを勝手に使うわけにもいかない。西武鉄道広報部の担当者は、こう説明する。
「応援広告は、弊社指定代理店経由でのご相談・契約となります。広告意匠に著名人の写真などの素材を使用する場合は、広告主または指定代理店から所属事務所など権利元に使用許可を事前にいただき、それが確認できた場合に広告掲出ができます。なお、通常の広告と同様に、弊社内の基準に則った意匠審査もございます」
無事に許可が取れたとして、次に気になるのが予算。いったいどれくらいの元手があれば、広告が出せるのだろうか。
「例えば、B1サイズのポスターを池袋駅に掲出する場合、7日間掲出で3万8500円(税込=以下同)、今回の募集広告を掲出している『新大久保横断幕』は、7日間掲出で27万5000円です。掲出場所は、一部対象外の媒体がございますが、車内や駅などの多くの媒体が対応しております。
この価格以外に、デザイン制作費用やポスター制作費用など別途必要です」(西武鉄道広報部の担当者)
駅にポスターを出すなら個人でもできそうだし、目立つ横断幕も同じ「推し」を応援する仲間を集めれば、そんなに高いハードルではないかもしれない。
新大久保の横断幕で一気に注目を集めた「センイル広告」。日本で当たり前のように見られる日はそう遠くないのかも!?