「急な雨が降ってきて、赤ん坊を抱っこしたまま雨宿り。出掛けたことを後悔する私に、見知らぬ男性が...」(岡山県・50代女性)
「返してくれなくていいですよ」
今から25年ほど前、子供がまだ生後3ヶ月の頃です。岡山市に住んでいた私は倉敷市に用事があり、子供を連れて車で出掛けました。用事がある場所は駐車場から近く、すぐに済むことでもあったので子供を抱いて行きました。
その後、用事が終わり商店街を抜けると雨が降っていました。車までは1人なら走って行ける距離と雨の量でしたが、子供を抱いていてはそうする訳にもいきません。仕方なく近くのお店の人に許可をいただいて軒先で雨宿りをしていました。
うちの子は平均より体重が重かったため、抱っこしている腕がどんどん痺れてくるし、初めての子でもあったので正直なところ心細く、子供を連れて1人で用事に出かけたことを後悔していました。
そんな時、1人の男性が私達に近付いてきました。その人は、しばらく前に私の横を通り過ぎていった人でした。
「どうぞ使って下さい」
その人はそう言って、私に傘を差し出しました。コンビニで買えるような傘ではなく、男性用の立派な傘です。
私は「貸してもらっても返しに来ることが出来ない」と最初はお断りしたのですが、その男性は
「僕にも子供がいるので大変なのはわかります。返してくれなくていいですよ」
と言ってくれました。