海も、山も、川も! 大自然に囲まれた愛媛・西条市でアウトドア→温泉のコンボをキメたら...最高すぎた
愛媛県東部に位置する西条市。
宝島社が月刊誌「田舎暮しの本」で21年1月に発表した「2021年版第9回 住みたい田舎ベストランキング」では、すべての部門で1位を獲得し、その知名度をグイグイあげている市である。
人の心を惹きつける魅力は、移住のしやすさ、暮らしやすさだけにとどまらない。
西日本最高峰・石鎚(いしづち)山と瀬戸内海の間に位置し、海でも、山でも、川でも思いっきり遊べる自然豊かな場所なのだ。
大自然を満喫したい――。そう思った筆者は西条に飛び、とびっきり楽しいアウトドア体験にチャレンジしてきた。
市街から10分ほどで、自然が広がる!
市中心部から石鎚山方面に向かって車を走らせること、わずか10分。
石鎚山から瀬戸内海に注ぐ二級河川・加茂川に沿った国道194号(そらやま街道)の左手に、筆者を待っている人物がいた。
加茂川でSUP(スタンドアップパドルボード)やカヤック、トレッキングの体験会を行う「西条アウトドアサービス」の上田公彦(42)さんだ。今回、記者の体験をガイドしてくれる。
彼とともに大きなボードやパドルなどの道具を持って歩き、そのまま国道脇の茂みをてくてく。
小道を進むと、川の流れが穏やかな場所にたどり着いた。
空はカーッと晴れ、スッと体に吹き付ける風が、暑さを吹き飛ばす。
川の水は、深さ4メートルくらいある場所でも、底の草や小石が見えるほど透き通っていた。
さっそく、アウトドア体験、スタートだ!
ボートに乗ってみると...
まずはライフジャケットを着て、上田さんからパドルの操作や座り方のレクチャーを受ける。
乗り方は、至ってシンプル。プカプカ浮いたボードに、腰掛ける。
バランスを取りながら、ボードに片足ずつ乗せて、あとは両足を伸ばすだけ。
「SUPってスタンドアップパドルボードという名前ですけど、立ってこぐ必要はありません」(上田さん)
自分が楽な座り方でいいとのことで、筆者はあぐらをかいて座ってみた。
そのままパドルを手に取り漕いでみる。
座っているときは、両側に水を掻く「ブレード」を付けた状態でパドルを使う。
まっすぐ前方に進むためには、右左交互にブレードを水に入れ、パドルを引くようにして漕ぐ。左に舵を取りたかったら、右側だけ水を掻く。バックする場合は、進むときとは逆にパドルを押し出すように動かす。
言われたとおりにすると、バランスを取りながらスイスイ進むことができた。
そのまま上田さんとともに、少し遠出。おしゃべりしながら、加茂川を進んでいく。
体験者の8割が「川の上で昼寝」
SUP体験で筆者が気に入ったのは、静かな川面でゆったりする過ごし方だ。
そのまま、寝てしまいたくなった。そう思う人は、実は多いらしい。
なんと、西条アウトドアサービスの体験会では、8割近いお客さんがボードの上で昼寝をするという。
そのまま瀬戸内海まで、流されたりしないのだろうか。
「大きな木にボードをロープでくくりつけて、留まるようにしますね。あるいは、反転流(はんてんりゅう)を見つけると、流されません」
川では基本的に、上流から下流に向かって水が流れる。ところが、川底の岩や川岸の地形によって、本流とは逆に水が流れる「反転流」と呼ばれるスポットが生まれるという。
反転流にうまくボードを乗せられるとボードがグルグルと動き、流されることはない。そこでは、空を見上げて雲の移ろいを楽しみながら、寝ることができるのだ。
いやはや......、なんて心地がいいのだろう。
「この前いらっしゃった家族は、僕とお子さんが一緒にボードで遊んで、ご両親はボードで寝てらっしゃいました。仕事の疲れを癒すには、最適なようです」(上田さん)
また祖父と孫が一緒にボードに乗って、プカプカしていたこともあったという。年齢に関係なく、ゆったりとした時間を過ごすことができる体験会により、リピーターのお客さんも増えているとのこと。
19年に西条へ移住した上田さん。そのワケは?
筆者は川の上で、上田さんにいろんな話を聞くことができた。
実は彼は、生まれも育ちも西条、ではない。
市の起業型地域おこし協力隊として、19年3月に移住してきたのだ。それまでは大阪のアウトドア用品店「モンベル」で働きながら、紀伊半島を拠点にカヤックやトレッキングのツアーガイドをしていたという。
そんな上田さんが、なぜ移住先に西条を選んだのだろうか。
「海も山も川もあるからですね。しかも瀬戸内海から石鎚山系まで、25キロくらいしか距離がないことです。
自然が一つの街にギュッと詰まっていたので、面白いなと思って移住を決めました」
19年には、体験会を実施可能な場所を探して市内の調査を実施。川は風の強さや降水量といった自然環境が日々変化するため、季節ごとの気温や水温などをチェックしたという。
そして、上田さんがアクティビティを行いやすい場所として選んだのが、加茂川。20年夏からこの場所での体験会がスタートした。
上田さんは現在、体験会を行うだけでなく、西条の自然を多様性豊かな森にするため、放置された森林の伐採や森林公園の整備などといった林業の仕事もしているという。
これからの目標を聞いてみると、
「アウトドアの体験会に限らず、西条の自然を使って市内外からお客さんを呼んで、その魅力に気づいていただけたらなあと...。そんな仕事を生業に、林業や農業も並行して行って、同時に西条の自然も守っていければと思います」
と抱負を語った。
さて、ボードを漕ぎながら聞いていると、上田さんがこう切り出した。
「慣れてきたようですし、立ってみますか?」
これが何とも難しい。ひっくり返るのでは......、と思うと足がすくんでしまう。
でも、上田さん曰く、ボードの真ん中に両足を肩幅くらいに広げて立つと、バランスがとりやすいとのことだったので、頑張ってみた。
立ち漕ぎは座っている時よりも、ボードが揺れてバランスをとるのが難しい。
それでもと立ってみると、水の上から見える青々とした木々が生い茂る景色を全身で味わうことができた。
ゆったり浮かんでいるのも、全身で風を感じるのも、最高だ......!
しらす、うんめ~
1~2時間のSUP体験を終え、ほどよく体が疲れたし、それにお腹もすいてきた筆者。
街に戻り、瀬戸内海を一望できるリゾートホテルへと向かうことに。
加茂川から車で約30分。瀬戸内海国立公園の高台に、「休暇村 瀬戸内東予」がある。
この日は、天気は良かったものの、雲の量が少し多かった。
雲がなければ、入り口付近から瀬戸内海を背にして石鎚山を見ることもできる。
そんな抜群のロケーションで、一休み。
休暇村瀬戸内東予では、日帰り利用も可能で、誰でも気軽にランチや温泉を楽しむことができる。
鯛の身をほぐして麦みそと絡めた愛媛の郷土料理「伊予さつま汁定食」や愛媛・大分間の宇和海で養殖されたブランドマグロを使った「だてまぐろ刺身定食」のほか、今治市のB級グルメ「焼豚玉子飯」など、愛媛ならではのグルメを楽しめる。
筆者は愛媛県西部にある伊方町産のしらすを使った「石鎚しらす丼」を注文した。
丼ぶりに高く盛られたしらすは、石鎚山をイメージしているそう。
サッとぽん酢をかけ、しらすを口に放り込む。新鮮で、超おいしい!
たくさん体を動かして、非常にお腹が空いていた筆者は、「鯛カツバーガー」も頼んでみた。
バンズには愛媛産の鯛が挟まれ、タルタルソースが掛かっている。大葉が脂っこさを中和してくれて、ぺろりと平らげてしまった。
愛媛は養殖まだいの生産量が全国1位(19年時点。愛媛県公式サイトより)。メニューには、「鯛のあら炊き定食」や「鯛の釜飯定食」などもあった。
瀬戸内海を眺めながら、鯛カツ。いやはや、最高だった。
目いっぱいアウトドアを楽しみ、お腹も満たした。最後は、やっぱり温泉だろう。
窓からも瀬戸内海!?
施設内の「ひうちなだ温泉の源泉は、市内にある本谷温泉。松山の道後温泉、今治の鈍川温泉と並び「伊予の三湯」と称されている。
大浴場には大きな窓があって、湯につかりながら瀬戸内海を一望できる。まるで海に浸っている気分だった。
瀬戸内海をさらに間近でみたいなら、露天風呂がおすすめだ。
湯で体を温めて、スッと立つ。全身に瀬戸内の風を感じると、最高に気持ちいいのだ。
西条市には、市街からほど近い場所に海や川、山がある。おまけに、グルメも温泉も、満喫できる。
最高の体験を、皆さんもいかがだろうか!
<企画編集・Jタウンネット>