広島の商店街に活気を取り戻せ! スマホゲーム活用の「街歩きイベント」で生み出した「人とのつながり」
集客イベントは難しいが、何ができるか?
プロジェクトが次の段階に進んだのは、20年12月。
人とのつながりをつくる――この目的に合致するソリューションを持つ企業を、six brainを通じて探すことになった。このとき、手腕を発揮したのが、デロイト トーマツ ベンチャーサポート・シニアマネジャーの外山陽介さんだ。
「松川さん、清老さんたちからは『つながり』をつくることと関連して、デジタル技術を活用して、何かデータを取得できないか、というリクエストがありました。
たとえば、交通量調査でもデータがとれますけれど、その場合は性別や年齢層など限定的なものです。今回はそれ以上のデータを拾い上げ、実証実験終了後も活用したい。データをもとに、商店街をひとつにまとめ上げたい――そんなねらいがあったようです」(デロイト トーマツ・外山さん)
いくつか候補となる企業があったなかで、協働先として決まったのが、リアルワールドゲームス社だった。同社は、スマートフォン向け位置情報ゲーム「ビットにゃんたーず(ビトにゃん)」を運営している。
まちの再発見をコンセプトとする「ビトにゃん」は、マチナカの特徴的なスポット(ネコスポット)に行くと、地図と連動したアプリ上で、キャラクターやアイテムが出現。実際に歩いて、それらを集めて回るゲームである。なお、「ビトにゃん」は、他の自治体とのコラボイベントの実績も持っていた。
「データ収集の面で『ビトにゃん』は、誰がどれくらいの時間プレイしたか、どこに行ったかといった情報が得られるところが魅力でした。
幸いにも本通商店街をはじめ中心エリアへの人通りはそれなりにあるのですが、各店舗への客足につながっていませんでした。 こうした実情を数値として把握できるデータがあるなら、活用したかったのです」(セトラ・松川さん)
さらに、べっぴん店・渡部さんによると、参加者数とプレイ時間をかけて算出した数値は、「にぎわい」の指標として利用できるのではないか、という点でも注目したという。
なによりも、アプリの使い方次第では、新型コロナの影響下でも、実現可能なイベントとして発展しそうなワクワク感があった。
「新型コロナの影響で集客型イベントが難しいなか、これまでとは違う発想から、『にぎわい』『つながり』を生み出すにはどうしたらいいか――みんなで前向きに考えて、知恵や工夫を出し合いました」(べっぴん店・渡部さん)
こうして、松川さんや商店街メンバーによって、手作りで実現にこぎつけたのが、「ビトにゃん」を活用した街歩きイベント「IN TOWN WALK(インタウンウォーク)」(21年4月24日~5月5日/フォトコンテストも実施)だった。
しかも、ひろしまフラワーフェスティバル、Jリーグ・サンフレッチェ広島を巻き込んだ一大イベントにまで発展していったのだ。