同人誌は室町時代から存在した...? 当時の素人が描いた「新蔵人物語絵巻」が薄い本のようなストーリーだと話題に
2020.10.11 17:00
15~16世紀に流行した小型絵巻
上野さんによれば、「新蔵人物語絵巻」のような小型絵巻は15~16世紀にかけて流行。縦の幅が、通常の絵巻の約半分の大きさ(15センチ程度)となっている。
その中でも、この作品のように墨の線を主体に描かれた絵巻は「白描小絵」と呼ばれる。上野さんは、白描小絵の楽しみ方を次のように話している。
「白描であれば、絵具を持っていなくても描けます。また小絵であれば、必要な紙も少なく、絵を描くことを職業としていない人でも、創作意欲を形にしやすかったと想像できます。白描小絵は自分のためであれ、他人のためであれ、私的にこっそり楽しんでいたと考えられます」
また上野さんによれば、白描小絵は、女性の登場人物が強調される、室内の様子や出産、妊娠、家事の詳細が描かれるなど、女性目線の作品が少なくない。そのため、白描小絵の制作者は女性が多いと考えられているという。
室町時代の人も現代人とそう遠くない嗜好を持っていたと考えると、なんだか感慨深い。作品が「室町の同人誌」としてツイッターで話題になっていたことについて、上野さんは、
「『新蔵人物語絵巻』については、かねてより『男装の麗人みたいでしょ?』『現代のマンガにもありそうなテーマ!』『白描小絵って同人誌みたいでしょ?』と思っていましたので、共感していただける方が多く嬉しいです。これをきっかけに、他の絵巻にも興味を持っていただければ幸いです」
と話している。