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あるカフェの「イノシシから守り抜いたスイーツ」が話題に インパクト大のネーミングに込められた、店主の思いを聞いてみた

井上 祐亮

井上 祐亮

2020.09.21 08:00
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POPに隠されたオーナーの思い

イノシシへの「殺意が濃い」と話題のカフェ「DAISHIN」。お店は愛媛県今治市の大三島(おおみしま)町にあり、観光スポット「大山祇(おおやまづみ)神社」からほど近い場所に位置する。

「殺意が濃い」と投稿者(画像はyamoto(@yamoto)さんから)
「殺意が濃い」と投稿者(画像はyamoto(@yamoto)さんから)

イノシシとミカンに何の関係があるのか、と思った人もいるかもしれない。

真相を確かめるためにJタウンネットは15日、カフェ「DAISHIN」のオーナー・渡邉秀典さんに詳しい話を聞いてみた。

渡邉さんは、カフェのオーナーでありながら、実は「ミカン農家」と「猟師」という肩書も持つ男性。

さらに「野生鳥獣との新たな共生のカタチ」をテーマにイノシシの捕獲や食肉の販売などを行う地域団体「しまなみイノシシ活用隊」の代表でもある。捕獲したイノシシを地元の食肉処理場に持っていき、販売できるカタチにしているそうだ。

カフェ「DAISHIN」の看板メニューはそのイノシシ肉を使った「ハンバーグプレート」や「デミオムライス」。

渡邉さんは、イノシシ肉の販売販路を広げ、最終的な目標としては「地元の特産品」にしたいという思いでカフェを開いている。「肉はイノシシ肉しか提供していません」とのことだ。

つまりカフェ「DAISHIN」では、自身のバックグラウンドに関わる食材などを提供しているのだ。

そして、「イノシシから守り抜いた」みかんジュレやクラッシュアイスである。

このフレーズは「お客さんにとって、クスッと笑ってもらえるように」という思いで用意。「話題になって、我々の活動(活用隊)も知ってもらえれば」と渡邉さんは話す。

カフェ入り口の窓ガラスに貼ってある手書きのPOPの他に、お土産用に瓶詰されたミカンジュースにも「イノシシから守り抜いた」というラベルを貼っているそうだ。

「守り抜く」とは、畑を荒らすイノシシを捕獲し適切なカタチで処理すること。

先に紹介した「しまなみイノシシ活用隊」の公式サイトには、イノシシといった野生鳥獣との「付き合い方」について、こう記されている。

「私たちは、野生鳥獣による農産物被害は、単に人間が被害者、野生鳥獣が加害者という関係にしてはいけないと考えています。

みかんを食い荒らすイノシシを食材として提供し、皮を革製品として付加価値をつけ、骨をスープの原料にするなど、地域の農業被害を超える価値を生み出すことができれば、彼らの存在は全体で見ればプラスの存在になるはずです。

これこそが私たちの考える新たな共生の一つの形であり、私たちはこれを実現するために、あらゆる可能性を模索します」

また、渡邉さんは取材の中で、「野生動物との上手に付き合っていく方法を探るしかないと思います」と話す。

「獣害というのは、一度発生してしまうと、もはや発生前には戻れない感覚があります。一方的に排除するのではなくて、共生する仕組みをつくるしかないというのが私の考えです。みかんは食われるけど、一部はお肉としていただくよ、と適正な数までバランスをとっていくのが妥協点かなと思っています」

「イノシシから守り抜いた」というフレーズには、並々ならぬ思いが込められていた。

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