ココからあなたの
都道府県を選択!
全国
猛者
自販機
家族
グルメ
あの時はありがとう
旅先いい話

静岡で麩菓子といえば「ピンク色」らしい 他県民は知らない「さくら棒」文化の謎を追った

笹木 萌

笹木 萌

2020.07.12 08:00
0

静岡でお馴染みの麩菓子「さくら棒」をご存知だろうか。

さくら棒は主に静岡で販売されるピンク色の麩菓子のこと。特に屋台などでは90センチほどの長いものが売られている。

名古屋を舞台にした漫画「八十亀ちゃんかんさつにっき」の著者・安藤正基さん(@aichidoughnut)は、そんな「さくら棒」にまつわる4コマ漫画を2020年6月15日にツイッターへ投稿。注目を集めている。

漫画に登場するのは長いさくら棒。「名古屋だとさくら棒の屋台見ないねぇ」と静岡県出身のキャラクターがつぶやき、東京育ちのキャラクターが「そもそもこんな色(ピンク)のふ菓子初めて見た」と返している。

麩菓子といえば、多くの人がかりんとうのような「濃い茶色」を思い浮かべるだろう。しかし静岡周辺の麩菓子は、長さを問わずピンクがデフォルトのようだ。

安藤さんの漫画にツイッターでは、地元民と思われるユーザーから、

「地元の夏祭りで毎年買ってるけど あれってローカルだったんだ(驚愕)」
「逆に短くてピンクじゃないさくら棒ってあるの?!そもそもさくら棒じゃないのか...!」
「黒糖の麩菓子があるのは知ってるけど、ピンクがノーマルだとばかり ちなみに東三河」

といった驚きの声が寄せられている。

筆者は名古屋に5年住んでいたが、さくら棒もピンクの麩菓子も見たことがない。一方で静岡出身の社員は当然さくら棒を知っており、ピンクの麩菓子についても「どこにでもあるだろ」と話していた。

いったいなぜ、静岡に独自の麩菓子文化が生まれたのだろうか。

長くした理由は...

Jタウンネットは6月18日、さくら棒を製造する栗山製麸所(静岡県掛川市)の2代目・栗山清さん(74)に話を聞いた。

静岡では定番の「さくら棒」(画像はあみ@Amiami_808さん提供)
静岡では定番の「さくら棒」(画像はあみ@Amiami_808さん提供)

栗山製麸所は栗山さんの父が戦後まもなく創業。長いさくら棒は栗山さんが40年ほど前に製造を始めた。それ以前は料理用の麩を製造していたが、他業者との競合もあり、売り上げは芳しくなかったという。

「何とかしなければと思い、インパクトのある長いお麩にしたらどうかと考え製造しました」

すでに県内で販売されていた短いさくら棒を、栗山さんは長く製造して販売。90センチというと結構な量だが、「クセのない素朴な味で、くどくないのでたくさん食べられる方もおります」とのこと。カラーはピンク色がほとんどだが、緑色と黄色も製造している。

さくら棒が「ピンク」の理由は?

そもそもなぜ、静岡の麩菓子はピンク色なのだろうか。

栗山さんによれば、県内で販売されるのはほとんどがピンク色の麩菓子。昔からあるもので、当時から「さくら棒」と呼ばれていたようだが、誰がいつから作り始めたのか、なぜピンク色が広まっているのかは分からないという。

(画像はあさぎり@Asagiri48さん提供)
(画像はあさぎり@Asagiri48さん提供)

ピンク色の麩菓子がメジャーになった理由についてもう少し探るべく、Jタウンネットは6月25日、長いさくら棒を販売する三島食品(三島市)の専務・伊丹千尋さん(32)にも話を聞いた。

三島食品は1958年に製麺所として創業。97年頃に富士宮市の製麩所から事業を引き継ぎ、現在は麩を専門に取り扱っている。伊丹さんによれば、さくら棒を製造している工場は高齢化などの理由で廃業が続き、県内でも数えるほどだという。

さくら棒がピンク色の理由について、伊丹さんは、

「諸説ありますが、戦後ぐらいに麩の周りに塗る黒糖が入ってこなくなり、白い砂糖を代用して塗ったのが始まりだと聞いています。白いお麩に白い砂糖を塗っても見えないので、食紅を入れてお麩自体をピンク色にしたそうです」

と話す。

さくら棒の考案者を発見?

さらに7月3日、Jタウンネットは、さくら棒の元祖ともいわれる浜松の佐藤麩店からさくら棒作りの事業を引き継いだ、大黒屋商事(藤枝市)の山口毅雄さん(31)を取材。山口さんを通じて、元職人の佐藤健さんに話を聞いてもらったところ、

「作ったのは佐藤さんが最初だったようです。最初は『さくら木(ぼく)』という名前にしようということで、黒糖を使わずピンクにしたのが始まりだったそうです。長いさくら棒も作っていましたが、こちらは最初かどうか分からないです」

とのことだった。

山口さんが事業を引き継ぐ際に始めたクラウドファンディングのページによれば、佐藤麩店は1949年に創業し2018年頃に廃業。「さくら木」が誕生した時期は、正確には分からないが50~60年ほど前だという。

なぜ静岡でピンク色の麩菓子が広まったのか、それは地元の人でも分からないそうだが、古くから親しまれてきたことは確かだろう。さくら棒、一度は食べてみたいものだ。

PAGETOP