混雑状況で価格が変わる? ある飲食店が導入した「ダイナミックプライシング定食」が画期的だと話題に
新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が全面解除され、外食の機会が増えたという人も多いだろう。
店内での「三密」を回避するため、飲食店も様々な対策を講じている。
中には、こんなやり方で混雑を防ごうとする店もある。
こちらはツイッターユーザーのKohei Katada(@kkatada)さんが2020年6月9日に投稿した写真。Katadaさんの行きつけだという定食屋「お食事処asatte」(東京都)のドアを撮影したものだという。ガラス部分には
「本日の価格予測表」
と書かれた表が。11時30分からは1100円、12時1分からは1500円など、30分から1時間おきに異なる価格が記されている。
一体どういうことなのだろう。
その隣に貼られている文章を読んでみると、混雑を回避するために「ダイナミックプライシング」という方法を導入すると説明されている。
ダイナミックプライシングとは、「需給状況に応じて価格を変動させることによって需要の調整を図る手法」(デジタル大辞泉より)。身近な例で言うと、繁忙期には高くなり、閑散期には安くなるホテルの宿泊代や飛行機のチケット代金がわかりやすいだろう。
これを、飲食店で利用するというのだ。
「飲食店には混み合う時間帯や空いている時間帯が存在しています。
その中で混み合う時間帯は高価格を設定することで市場原理によりご来店数をコントロールします。
逆に空いている時間帯にはこれまでの価格を下回る設定とし、集客を狙います。
営業時間内でのお客様数の均一化が狙いですので、日々金額は変動してゆきます。
あくまでも当店の日替わり定食は約1000円前後という表現が適当となります」(貼り紙より一部抜粋)
つまり、店内の混雑を避けるため、同じメニューを時間帯によって価格を変えて提供する、ということのようだ。
ツイッターではこの取り組みに対し、
「こういうのを待っていた」
「物凄い斬新なやり方!
これはお客さんも行く時間考えるしお店も密を防げるしで一挙両得」
「今、無理なくお店を経営していくための最善策では」
など称賛の声が上がっている。
「空間」に価格が付いた?
なぜこのような取り組みを始めたのだろう。Jタウンネット編集部は10日、同店の運営会社・バターの代表取締役・田中一央さんを電話で取材した。
田中さんによると、お食事処asatteは、3月27日ごろから5月いっぱいは店内での食事提供を自粛し、弁当の販売のみで営業していた。そして、6月1日から店内での飲食を再開したという。店内は小さく、席数は12席のみ。
「ありがたいことに、結構お客様来ていただいているお店だったので、かつ、すごく狭いお店なんですね。そこにぎゅうぎゅうに入っていただいて、運営していたんです。
今の状況の中で、(三密を回避するために)席数を減らして運営すると、事業が成り立っていかないという事情があって。利益を捻出していかなければ、毎日来ていただいている方にもご迷惑をおかけしてしまうし、ということで考えた結果この形を採用しました」
と田中さん。
同店のメニューは日替わり定食のみで、以前は一食1000円(税込)だった。その値段を、これまで混雑していた時間帯には高くし、空いていた時間帯に安くすることで、店を訪れる人の数を分散させようというのだ。
どの時間帯に、どれくらいの価格で定食を提供するかは、目標とする売り上げから割り出していくという。
1週間この形で運営してみたところ、
「狙い通りお客様の数はコントロールできているとは思います」
と田中さん。従来のピーク時には、これまでのような混雑はなくなったようだ。しかし、価格が最も安い時間帯に客が集中してしまうこともあるそう。
「人ができるだけいない、というところに高いお金を払ってもいい、という方もおそらくいるだろうと想定していました。実際に、そういう方もいらっしゃったのですが、想定していたほどはいらっしゃらなかったので、それをいかに金額に反映させていくかがプランの課題だと思います」(田中さん)
これからこの形式で運営を続け、状況を見ながら金額を変動させていくそう。週に1回程度価格を変えることになるのではないか、と田中さん。
今回の取り組みを行ってみた感想を聞いてみると、
「『密』であることに金額をつけたというか、空間は高いですよ、という。隣との距離がある店は高くなっちゃうし、ぎちぎちに入っていると安くなっちゃうという感覚です。今までなかったところに価格がついたのかな、と感じているところです」
としていた。
少し混んでいても安い店と、ちょっと高いけれどすいている店。同じ食事が食べられるなら、今の皆さんはどちらの店を選ぶだろうか。