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明治時代にタイムスリップ! 「岩手銀行赤レンガ館」の内部建築が最高すぎる

笹木 萌

笹木 萌

2020.01.22 20:00
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岩手銀行赤レンガ館の内部(写真提供はすべて、岩手銀行赤レンガ館)
岩手銀行赤レンガ館の内部(写真提供はすべて、岩手銀行赤レンガ館)

岩手県の県庁所在地・盛岡市は、旧南部藩の城下町であり、石川啄木や宮沢賢治が青春時代を過ごした街としても知られる、歴史と文化を誇る都市だ。ここに1911年(明治44年)に建てられたという赤レンガ造りの洋館がある。「岩手銀行赤レンガ館」だ。

場所は、啄木が「不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心」と詠んだ、盛岡城(旧不来方城)のすぐ近くだ。北上川の支流・中津川に架かる中の橋付近で、盛岡市中心部のランドマークとなっている。

この「岩手銀行赤レンガ館」について、2020年1月15日、次のようなツイートが投稿され、話題となっている。

「フラッと寄ったら想像以上に最高だった」という感想と共に、投稿者の幣束さん(@goshuinchou)が撮影した写真が添えてある。

この建物は、東京駅の設計者として名高い辰野金吾の設計。1994年に国の重要文化財に指定され、岩手銀行中ノ橋支店として2012年まで営業を続けていた。その後、復元工事に入ったと聞いていたが、内部公開が始まっていたのだ。

ツイッターには、「何回か前を通ったことあるけど、内部も見ることができるのか」「天井高いっすね~」などといった反響が寄せられ、22日15時時点で6600を超える「いいね」が付けられている。

Jタウンネット編集部は、「岩手銀行赤レンガ館」について詳しい話を聞いてみた。

内部公開の見どころは

エントランスホール
エントランスホール

Jタウンネット編集部の取材に答えてくれたのは、岩手銀行広報CSR室の担当者だ。

まず、内部公開のきっかけを聞いた。

「1994年(平成6年)に現役の銀行として初めて国の重要文化財に指定され、2012年(平成24年)8月まで営業していましたが、建物の老朽化、東日本大震災の影響もあり銀行としての営業を終了しました。

その後、地域の賑わいを生み出す建物として活用しようと、約3年半に渡る保存修理工事を行い、現在は公開施設としています。

銀行時代に営業室として使用していた多目的ホールは、地域の方々の発表会、作品展などに活用していただいています」
多目的ホール大
多目的ホール大

内部公開の見どころについては、

「旧建築様式が復元されたエントランスホール、応接室、金庫室など、創建当時の様子が伺える空間がご鑑賞いただけます。多目的ホール上部のシャンデリアも見どころのひとつです」

と話していた。

欄間装飾とシャンデリア(岩手銀行ゾーン南側)
欄間装飾とシャンデリア(岩手銀行ゾーン南側)

設計は辰野金吾の他に、岩手出身の協力者がいたそうだが、

「辰野金吾と、その教え子で盛岡出身の葛西萬司があたりました。館内装飾のどこまで辰野金吾が手がけたのかは分かりません」

とのこと。

そこで、Jタウンネット記者は葛西萬司について調べてみた。

「葛西萬司は1863年(文久3年)7月21日,盛岡上衆小路(現:盛岡市下ノ橋町)にて盛岡藩士鴨澤舎の次男として生まれた。盛岡藩士であり,のちに岩手銀行頭取となる葛西重雄の養子となり葛西姓を名乗る。

12歳で上京した後,慶応義塾,第一高等中学校をへて,1890年(明治23年),帝国大学工科大学造家学科を卒業した。同年,日本銀行建築科へ技師として就職,そこで辰野金吾とともに建築の仕事に従事した。1903年(明治36年)8月,辰野とともに辰野葛西建築事務所を開設する」(盛岡市のホームページ内『盛岡の先人たち』第44回より)

全国を駆け回っていた辰野金吾に代わって、盛岡市内の現場の細部にまで目を配っていたのは、盛岡出身の葛西萬司であったかもしれない。九州佐賀の唐津藩出身の辰野よりも、盛岡出身の葛西の方が自然に力が入ったのではないだろうか。

また明治時代後期、地元の人々が話す南部弁を九州人の辰野が正確に理解するのは、相当に難しかったはずだ。単に方言だけでなく、気質の問題もある。そこで盛岡出身の葛西に頼る部分も多かったのではないかと、Jタウンネット記者は想像する。

「東京駅に似ている」と言われるが...

もう一つ注目すべき点は、1911年竣工という時期である。東京駅開業が1914年(大正3年)だから、3年前だ。外観を見て、東京駅に似ているという人が多いが、正確には、東京駅が岩手銀行に似ているのだ。東京駅のモデルケースが、この岩手銀行というわけだ。

東京駅の設計も、辰野葛西建築事務所が手がけた。葛西萬司は辰野金吾とともに大いに力を発揮したのだ。岩手銀行で試した技術を、東京駅に応用してみたなんてこともあるかもしれない。建築素人のJタウンネット記者の妄想はまたまた膨らんでしまった。

岩手銀行赤レンガ館の内部を見学するとき、東京駅と比較してじっくり細部を見るのもおもしろいだろう。辰野金吾と、盛岡出身の葛西萬司の力作は、必見ものだ。

岩手銀行赤レンガ館外観前景
岩手銀行赤レンガ館外観前景

観光客の反響はいかがですか? と聞くと、

「観光誌等でも取り上げていただいているため、多くの観光客の方に訪れていただいています。海外からいらした観光客の方も多いです」

と、広報担当者。

投稿は目下SNSで拡散中だが、

「直接の反応はいただいておりませんが、SNSで拡散していただいているのは拝見しています。もともと『地域の賑わいを生み出したい』という目的で公開した建物ですので、多くの方に知っていただき、盛岡、岩手に来ていただくきっかけになれば嬉しいです」

と話している。

盛岡に行く機会があれば、岩手銀行赤レンガ館の中をぜひ探訪したいものだ。

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