土用丑の日の「うなぎ危機」、専門店はどう見たか? 福岡の老舗「田舎庵」に聞く
スーパーとの違いは
量販店との差は、養殖環境だけではない。焼きの工程にも違いがあるという。
「ウナギを焼くと、グーっと縮みますよね。スーパーではなるべく長さを保とうとして、ちょっとしか焼かない。うちのはよく焼くから、元の半分くらいの長さになる。スーパーのは見た目が大きいけど、火が通ったばかりでプリンプリンとした食感。ウナギは焦げる直前まで焼くのがおいしいんです。だから私はヤキが回ったんでしょうね(笑)」(弘さん)

ウナギには牛肉などと違って、生産から流通までを追跡するトレーサビリティー制度が存在しない。そのため、量販店に出回っている蒲焼の中には、消費期限の範囲内ながら、数年前に加工されたものもあると話す。
「そのからくりは、みんな知らないんだよ。『予約販売』と聞いて、明日つくるのかと思いますよね。『これは1年前に作りました』と言われたら、あなた買いますか? 黙って売る、それがいけない。ウナギだけに、のらりくらりと煙に巻くんです。それを悪とするか、善とするか。わたしはそれを正確に伝えていく。あとは消費者の人が判断してください。私は判断材料を伝えたほうがいいと思っています」(弘さん)
帰りがけに、鰻重をいただいた。パリパリの皮に、身はふわっと。油はクドくなく、さっぱりとした後味だ。その背景にあるエピソードを知ったからこそ、思いのこもった職人技を、より実感できるのだった。
(Jタウンネット編集長 城戸譲)
