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全国に広がる「新幹線の通学補助」 若者の地元回帰へとつながるか

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2018.05.19 20:00
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東京への若年層流出を食い止めたい

新幹線通学費を補助ではなく、貸与という形を取っているのが静岡県静岡市だ。上限3万円で、1か月当たり新幹線通学定期券の額の3分の1が貸与される。返済が必要になるが、卒業後も静岡市に在住し、市内で就職した場合は全額免除となる。

東京への若者の流出は静岡全体の傾向だという(Halowandさん撮影, Wikimedia Commonsより)
東京への若者の流出は静岡全体の傾向だという(Halowandさん撮影, Wikimedia Commonsより)

地方都市とはいえ静岡市は人口も安定している印象があるが、取材に答えた市企画局企画課の担当者は、危機感をにじませる。

「静岡市では2025年まで人口70万人を維持することを目標としていますが、18歳から20代前半の首都圏、特に東京への流出が続いています。市内の大学だけではすべての学生を受け入れられない以上、市外進学はやむを得ませんが、地元から通えるという選択肢を提示したいと考えました」

市内の高校3年生を対象にチラシを配布するなど、制度の告知にも積極的に取り組んでおり、2016年の開始以来、毎年100人以上が新規申請している。制度のことを学生同士の口コミで知り、申請してくる学生もいるという。

「東京都内に住むとなると経済的負担が大きかったが、実家から通学することで東京の大学に進学できたという声も寄せられています。また、貸与を利用した学生の地元就職率は、そうでない学生よりも高いというデータも出ており、継続することで一定の効果が期待できるのでは、と考えています」

同じ静岡県内で、全国的にも珍しい人口増加を続けている自治体である長泉町も、2018年から新幹線通学支援補助金を始めた。子どもの数も増加している長泉町だが、同町こども未来課・子育て支援チームの担当者は取材に対し、「大学進学を機に東京に出てしまうのは、静岡全体の傾向で課題」だと話す。

「人口が増えているからと安心せず、課題に対しては対策を講じるべきだと考えました。そこで最低でも高校3年間は長泉町に住んでいた方を対象に、1か月あたり2万円、新幹線通学定期券の購入費の一部を補助しています」

上京する学生を想定しているため、距離制限としてJR三島駅から100キロ以上の区間(例外として新横浜は可)という条件は設けられているが、すでに85人が申請しているという。さらに卒業後の定住を図るため、「未来人定住応援事業」という取り組みも行っている。

「高校3年間は長泉町に居住し、大学進学で町外へと出ていても、卒業後に長泉町に在住し、5年間以上正規雇用されている方に最大30万円の奨励金を交付しており、新幹線通学の申請者にも『未来人定住応援事業』への仮エントリーを呼びかけています。こうした制度を通して、若い人たちに地元への愛着をより持っていただきたいですね」

今回紹介した自治体以外にも、新幹線通学は多数の自治体が取り組んでいる。ざっと検索をしただけでも、富山県黒部市、高岡市、広島県福山市などが確認できた。県外に進学すると帰ってこないことが常態化しつつある今、こうした取り組みはさらに広がっていきそうだ。

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