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水あめのようなミートソースの"ミラカン"とは? 愛知県名古屋市の「あんかけスパゲッティ」

at home VOX

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2016.05.13 21:02
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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は愛知県名古屋市へやってきました。言わずと知れた三大都市圏の中核をなす名古屋。近代的なビル群から活気あふれる商店街までさまざまな顔を持つ街です。

名古屋テレビ塔がそびえ立つ大通りは公園として整備されています。
名古屋テレビ塔がそびえ立つ大通りは公園として整備されています。
中区大須の巨大商店街の一角。およそ1200もの店舗・施設が集まっています。
中区大須の巨大商店街の一角。およそ1200もの店舗・施設が集まっています。

そんな名古屋は独特の食文化でも有名。みそカツや手羽先、天むす、ひつまぶしなど名古屋周辺が発祥の料理は「名古屋めし」と呼ばれ、全国的な知名度を誇るものも少なくありません。そのひとつに「あんかけスパゲッティ」というユニークな麺料理があります。地元では半世紀以上愛されてきたグルメだそうですが、近年注目度が急上昇中。その魅力をあんかけスパゲティの“元祖”「ヨコイ住吉本店」で、味わってきました!

■こしょうと極太麺のダブルパンチ

ヨコイは、あんかけスパゲティの考案者・横井博さんが1963年に創業した老舗。現在の本店は、商業エリアとして知られる中区栄の繁華街に建つビルの2階にあります。店の扉をたたくと、都会の騒がしさを忘れさせるレトロな空間が広がっていました。

ビルの2階に重厚な扉が出現。
ビルの2階に重厚な扉が出現。
クラシカルな音楽が流れる店内は広々としていて、雰囲気満点!
クラシカルな音楽が流れる店内は広々としていて、雰囲気満点!

案内してくれたのは、三代目の横井慎也さん。早速、あんかけスパゲッティを注文しようとメニューをめくると、そこに並んでいたのは謎の文字列。「ミラネーズ」「カントリー」「バイキング」「ピカタ」「サンジェルマン」……これは一体?

横井さん「創業当時からのメニュー名です。といっても、初代(横井博)がイメージでネーミングしたものなので意味はないんですけどね。そのなかであんかけスパゲッティの代名詞と言えるメニューが『ミラカン』です」

トッピング次第でさまざまな味が楽しめるあんかけスパゲッティのなかで、「ミラカン」はヨコイ以外の専門店でも取り扱いの多い人気メニューです。それでは今回は「ミラカン」を注文してみましょう!

「ミラカン」。具材に使われた赤ウインナなど、どこか懐かしさが感じられます。
「ミラカン」。具材に使われた赤ウインナなど、どこか懐かしさが感じられます。

横井さん「『ミラカン』は、ウインナハムベーコンなど肉を中心にのせた『ミラネーズ』と、玉ねぎピーマンマッシュルームなど野菜をのせた『カントリー』を掛け合わせたメニューです。創業当時はメニューになかったのですが、お客さんの要望で定番になりました」

麺と具材の周りにかけられているのが、あんかけスパゲッティの名前の由来にもなったオリジナルのミートソース牛肉玉ねぎじゃがいもにんじんといった具材をトマトペーストとともに形がなくなるまで煮込んだもので、中華料理のあんとは段違いの強い粘り気があります。その調理にかかる期間は、なんと1週間以上!

横井さん初日と2日目は仕込みと煮込みに費やします。大鍋に入れて焦げないように様子を見ながら火にかけたあと、冷蔵庫で1週間熟成させます。そうして寝かせることで、コクやまろやかさ、辛さがバランスよくまとまっていくのです」

スパゲティは創業当時から日本最古のパスタメーカーの製品「ボルカノ」を使用しています。
スパゲティは創業当時から日本最古のパスタメーカーの製品「ボルカノ」を使用しています。

麺は太さ1.6ミリが主流のスパゲティとしては極太の2.2ミリ。水あめをからめるように、とろとろのソースとスパゲティをあわせていただきます。

一口食べて驚いたのは、ソースにたっぷり混ざったこしょうの辛み。体の奥がカッと熱くなるほどパンチが効いており、その刺激がクセになりそう。その後でソースに溶けた肉や野菜が織りなす酸味とコクがやってきます。さらに麺をぐっとかみしめれば、いつものスパゲティとは明らかに違う歯ごたえともちもち感が!

横井さん「芯が残るようにボイルするアルデンテに対して、うちのスパゲティは“逆アルデンテ”と言えます。まずボイルしたあとに、水で締めて粗熱をとることで弾力を出します。その後にラードで炒め直すことで、中はもちもちで表面はカリッとした食感に仕上げているんです」

マッシュポテトとコールスローはヨコイ独自のサービス。他店ではサラダなどがついてくることも。
マッシュポテトとコールスローはヨコイ独自のサービス。他店ではサラダなどがついてくることも。

そんなあんかけスパゲッティには、毎朝手作りしているマッシュポテトコールスローがサービスでついてきます。こしょうの味が印象的なマッシュポテトは、同じくこしょうの効いたあんかけスパゲッティと相性抜群。塩もみや塩抜きでやわらかく仕上げられたコールスローは、少しすっぱくて口直しにぴったりです。

麺だけで230グラムとボリューミーな一皿ですが、スパイシーで後を引くソースと、シンプルな具材で飽きもきません。最近は女性客も増えていますが、意外にもぺろっと完食してしまうそうですよ。

■名古屋が育んだ“ジャパニーズ・スパゲティ”

あんかけスパゲッティが誕生したのは、初代・横井博さんがヨコイを創業する前の1959年ごろ。住吉本店のほど近くにある丸栄ホテル(現・名古屋国際ホテル)に、コックとして勤めていたときのことでした。

横井さん「当時はまだスパゲティがあまり知られていなかった時代。初代はスパゲティを日本に広めたいと思っていたらしく、イタリアのトマトを使った家庭料理をヒントに日本人向けのスパゲティソースを考案しました。それが今のあんかけスパゲッティのソースです」

独立を考えていた横井博さんは、ホテルを退職後の1961年に知人と共同出資で“あんかけスパゲッティ発祥の地”と呼ばれる「そーれ」を設立。その2年後に独立して、“元祖”と呼ばれるヨコイを創業しました。その後、時間をかけてあんかけスパゲッティは地域に浸透。今ではチェーン店から個人店まで数々の専門店が街にひしめき、家庭用のレトルトも流通しています。

中京圏の百貨店やスーパーのなかにはヨコイのスパゲティやソースを扱う店もあります。
中京圏の百貨店やスーパーのなかにはヨコイのスパゲティやソースを扱う店もあります。

あんかけスパゲッティが県外に知られるようになった今、ヨコイにも休日になるとたくさんの観光客が訪れます。一方で平日はガラッと客層が変わり、サラリーマンをはじめとした地元客であふれかえります。

横井さん常連さんは本当に多いです。週に2〜3回来られる方や、毎日という方も少なくありません。関西や東京に転勤が決まった人のなかには、市販品のスパゲティやソースを転勤先に送ったという人もいるみたいですよ」

彼らはメニューも見ずに「ミラネ、イチニ」「ピカタ、イチハン」など、独特の符丁でお気に入りのメニューを注文していきます。「イチニ」は1.2倍の略で350グラム「イチハン」は1.5倍の略で460グラム。その上にある「W(タブル)」700グラムととんでもない量です。基本の麺量が230グラムなのでちょっと計算が合いませんが、そこはユニークなメニュー名と同じで昔からの伝統。そうしておなかいっぱい食べられるのも、ファンが多い理由のひとつかもしれませんね!

横井さん「あんかけスパゲッティは愛知県、さらに言えば日本独特のスパゲティです。日本生まれのナポリタンと並ぶような“ジャパニーズ・スパゲティ”にしていきたいですね」

数々のバリエーションがあるなかで横井さんおすすめの「カントリーピカタ」。豚肉の黄金焼きがのっています。
数々のバリエーションがあるなかで横井さんおすすめの「カントリーピカタ」。豚肉の黄金焼きがのっています。

名古屋のソウルフードたるあんかけスパゲッティ。今までは名古屋に行かなければ食べるチャンスはほとんどありませんでしたが、今年4月にヨコイが東京・六本木に上陸。ついに関東でも元祖の味が楽しめるようになりました。それでも行けないという人は、お取り寄せするのも手かもしれませんね。もし名古屋を訪れたなら、必食です!

店舗情報

● ヨコイ住吉本店

住所:愛知県名古屋市中区栄3-10-11 サントウビル2F

電話:052-241-5571

営業時間:月〜土11:00〜15:30(LO15:15)/17:00〜21:00(LO20:35)、日11:30〜14:30(LO14:00)、祝日11:00〜15:00(LO14:35)

http://yokoi-anspa.jp/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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