15周年を迎えたウィキペディアが、地域振興の主役になるかもしれない(後編)
住民のアルバムに眠る写真を発掘
皆さんの家庭にも、子ども時代のアルバムが一冊はあるだろう。
あなたや家族が写っているのはもちろんだが、その後ろには、当時あなたが暮らしていた街の姿が写りこんでいるはずだ。その光景の中には、今は再開発などで消えてしまった街並み、姿を変えてしまった建物、あるいは当時の文化や習慣をうかがわせる貴重な材料が含まれているかもしれない。
しかしこうした写真はほとんどの場合、個人のアルバムで眠り続け、人目に触れることはない。時には、紛失してしまうこともある。
それを発掘しウェブ上に公開すれば、社会の公共財(コモンズ)として、地域の、そして世の中全体の役に立つのでは――。
高橋さんらによる二子玉川のウィキペディアタウンではこうした観点から、地元の住民にアルバムに眠る写真を持ち寄ってもらい、これをスキャンして、ウィキメディア・コモンズ(ウィキペディアの姉妹サイト。写真や動画などのメディアの保管庫)にアップロードする、という取り組みを、地域の商店街振興組合などと連携しながら続けている。
ウィキペディアに参加してもらう、といっても、経験のない人にとっては記事を執筆する、というのはなかなか難しい。その点、写真を持って来るだけならば、比較的ハードルは低くなる。「多様な方々に参加していただけるよう、間口を広げたい」という思いから、高橋さんはこの「写真」という切り口での活動を進めている。