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ガーリーなPR誌を創刊した埼玉・鶴ヶ島市の狙い

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.08.23 17:00
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埼玉県のほぼ中央部に位置する鶴ヶ島市は、若者向け広報紙「Soco-Soco TSURUGASHIMA(ソコソコ ツルガシマ)」を2015年7月に創刊した。

「Soco-Soco TSURUGASHIMA」(写真右が創刊号、左が第2号、編集部撮影)

「Soco-Soco TSURUGASHIMA」(写真右が創刊号、左が第2号、編集部撮影)

若い女性が好みそうなデザイン。その狙いは...

キャッチコピーは「"そこそこ"から居心地のいい"ソコ!"へ」。市政情報課の女性職員が制作を担当した。可愛らしいイラストやカラフルな色づかいにセンスの良さが感じられる。

創刊号の特集は「自分にご褒美~!鶴ヶ島を遊ぼう!」。おすすめフォトスポットやブルーベリー狩りのできる農園、夏祭り、プレミアム商品券販売のお知らせなどを紹介している。
第2号の表紙を飾ったのは、栄養士・料理研究家で「美人の9割は食事でつくられる」の著書もある太田カティーさん。地元出身の彼女が、外食時に気をつけるポイントや夏バテ防止のコツ、地元のお気に入り店などを紹介する。

A4判の裏表で2ページ、カラー刷り。通常は折りたたんだ状態になっていて、市内の駅や金融機関、市民センター、近隣の大学など約40カ所で配布中だ。毎月15日発行。

なぜ鶴ヶ島市はこのような媒体を創刊したのか。市のまわりには東洋大、東京電機大、大東文化大、東京国際大、城西大、尚美学園大、女子栄養大のキャンパスがある。
高度成長期に人口が急増したものの、近年は頭打ちの傾向にある。自他ともに認める「平凡」な都市だが、居心地のよさをアピールすることで、これらの大学に通う学生に移住を促そうという狙いだ。

平凡だけど交通の便はよい

東京から45キロ圏に位置する鶴ヶ島市。大きな川は流れておらず、自然災害の心配はほとんどない。平坦な地形なので足腰の弱った年配者も徒歩で移動しやすい。
関越道と圏央道が交差し、市内にインターチェンジが2カ所ある。東武東上線に乗れば池袋まで約40分だ。東京メトロ副都心線・有楽町線も乗り入れ、新宿三丁目や渋谷、横浜、有楽町へ乗り換えなしで行くことも可能。

埼玉県内における鶴ヶ島市の位置(編集部作成)

埼玉県内における鶴ヶ島市の位置(編集部作成)

1日平均乗降人員約3万7000人の若葉駅には、東武鉄道が設けた保育ステーションが直結する。

若葉駅西口

若葉駅西口
わかば保育ステーション入口

わかば保育ステーション入口

駅の反対側にはシネコン併設のショッピングモール「ワカバウォーク」があり、買い物には不自由しない。

ワカバウォーク

ワカバウォーク

その入口付近には市役所の出張所と市民活動推進センター、パスポートセンターがある。
同所はミーティングやセミナー、打合せスペースとして利用でき、コミュニティビジネスや社会的起業などの相談にも応じている。
日曜午後にセンターに立ち寄ったときは、テーブルでパソコン作業や読書する市民が何人もいた。

ワカバウォーク1階にある市役所出張所

ワカバウォーク1階にある市役所出張所

鶴ヶ島JCT近くに今年4月にオープンしたスーパーホームセンター「カインズ鶴ヶ島店」は、業界初のデジタル加工機を本格導入した工房が目玉だ。3Dプリンターやレーザーカッターなど専門的な加工機械を導入している。溶接ルームなどDIY上級者が楽しめる施設を備える一方で、テラス席を併設したフードコートもある。

カインズ鶴ヶ島店

カインズ鶴ヶ島店(カインズのプレスリリースより)

公共施設建設にあたり産学官+民が力を合わせる

2014年3月、全国の町づくり関係者が熱い視線を注ぐ建物が市内に完成した。「eコラボつるがしま」。非常時の災害拠点を兼ねた環境教育施設だ。

eコラボつるがしまの外観

eコラボつるがしまの外観

建設に当たっては、東洋大学理工学部建築学科と住民、そして市の3者がパブリックミーティングを繰り返した。
最初に予算枠と将来の見込みを住民に提示する。次に10人の学生がそれぞれ模型を作成・展示し、来場した住民の投票にかける。同時に意見を拾い上げ、それらを分析した学生は模型を再提出する。議論と投票を繰り返しながら徐々にプランを統合し、模型も更新していった。途中で予算超過が明らかになると、それをどう抑えるか参加者が知恵を絞った。
どこかの国の国立競技場関係者に見習ってもらいたいプロセスではある。

eコラボつるがしまの中庭

eコラボつるがしまの中庭

建物は地元の工務店が施工した。市役所職員と住民でメンテナンスできるシンプルな構造だが、教会建築のような三角屋根がモダンな印象を醸し出す。

eコラボつるがしまの内部

eコラボつるがしまの内部

建物内には地元の鉄道模型(Nゲージ)メーカーKATOのミニチュアが展示されていた。もちろんタダで遊べる。

メーカーKATOのミニチュア

メーカーKATOのミニチュア

eコラボつるがしまの隣には太陽光発電所もある。養命酒の工場の跡地に建設されたもので、一般家庭400~500世帯分の電力使用量に相当する発電能力がある。

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eコラボつるがしまも太陽光を動力としているほか、非常時には発電された電気を電気自動車に充電し、避難所となる他の公民館に供給する仕組みになっている。

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この施設は予約なしで見学できる。Jタウン編集部が訪れたときは、建物内にいた地元住民が案内係を務めてくれた。

「使い始めて『おやっ?』と気づいた点もないわけではありません。そのへんをどう対処するか、みんなで話し合っているところ」
「新しい取り組みですからね。ここで得た知見を次に活かしてほしいという思いがあります」

鶴ヶ島の町については次のような印象を抱いていた。

「私は中部地方の生まれですが、鶴ヶ島で子育てして、孫もここで生まれました。もう、鶴ヶ島が故郷なのです。この町をより良くしていきたい考えは、私だけでなく住民の誰もが共有していますよ」
「何もないところですが、若い人たちの意見に耳を傾ける雰囲気があると思います。未来を担うのは彼らなんですから」
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