激化する「ご当地牛」セールス合戦! TPPにブランド力で立ち向かえ
現在、輸入牛肉の関税は食肉が38.5%となっているが、政府は環太平洋連携協定(TPP)交渉の全相手国に対し、牛肉の輸入関税を一律に引き下げる検討に入った。北海道新聞のウェブサイトが2014年9月10日に報じている。政府は7月に牛肉関税を20%前後にする協定をオーストラリアと結んでいるが、さらに下がる可能性がある。
日本の畜産農家にとって大きな打撃となるのは必至だが、彼らもただ手をこまねいているわけではない。全国各地で銘柄牛(ブランド牛)の開発・販売が盛んに行われている。
香川のブランド牛はオリーブ育ちだから「オリーブ牛」
香川県は、首都圏のバイヤーや料理店、スーパーなどを対象に「オリーブ牛」セミナーを11日に開催する。うどんのイメージの強い香川県だが、オリーブも日本一の生産を誇る特産品だ。オリーブ果実を飼料化して讃岐牛に与え、「オリーブ牛」として売り出そうというもの。
同様にオリーブをエサにして飼育した「オリーブハマチ」の皮は緑がかっていて、魚の臭みが押さえられているという(香川の名産が出会った「オリーブハマチ」 「身が締まってさっぱりしている」と好評参照)。
オリーブ牛の方は、オリーブ効果で肉汁が少なく脂がさっぱりしているというのがうたい文句だ。
香川県新ブランド和牛「オリーブ牛」(YouTubeより)
秋田はブランド名を統一、愛媛は2015年に販売開始
米どころとしてのイメージが強い秋田だが、三梨牛や羽後牛をはじめ、黒毛和牛は25種類も存在する。ただでさえ秋田の和牛の知名度は低いのに、いくつも銘柄があると普及に不利......と考えた県は今年、「秋田牛」とブランド名を統一し、大々的にPRしていくことを決めた。
10月6日にはデビューイベントが秋田市内で開催される。当日は秋田牛をふんだんに使った料理が楽しめるという。現在参加者を受付中だ(美の国あきたネット参照)。
香川のお隣、愛媛県でも2012年から4カ年計画でブランド牛「愛媛牛」の開発が進められている。
出荷月齢は27カ月と短く(通常は30カ月)、それでいて発育のいいのが特徴。重量のある2014年度中の試験販売、2015年春の一般販売を目指している。媛っこ地鶏や甘とろ豚と並ぶ3大ブランドに育てると県は意気込む。
以上3ブランドのほかにも多くのブランド牛が日本全国で展開されている。
「米沢牛」(山形)や「但馬牛」(兵庫)、「松坂牛」(三重)、宮崎牛は誰もが知る有名ブランドだ。
「玄米育ち岩手めんこい黒牛」(岩手)や「新生漢方牛」(宮城)、「しあわせ満天牛」「しあわせ絆牛」(千葉)、「甲州ワインビーフ」(山梨)、「伊予麦酒牛」(愛媛)などは、オリーブ牛と同様に飼料に工夫を凝らしている。
ご当地キャラに例えるのは適当ではないかもしれないが、ブランド牛の世界も決してゆるくなさそう。輸入牛肉に負けないブランドの確立――生産者の必死の取り組みに、今後も目が離せそうにない。