「雨に濡れる私の横を、笑いながら通り過ぎる男子中学生。傘が飛ばされた田んぼの方を眺めていると...」(岩手県・20代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Tさん(岩手県・20代女性)
Tさんにとってのヒーローは、小学生の時に出会った年上の男の子だ。
ある日、強風で傘を田んぼの中に飛ばされた彼女が、雨の中でぼう然としていると......。
<Tさんの体験談>
私がまだ小学生だった頃の話です。
通っていた小学校の近くには、「児童センター」と呼ばれる第二の学校のような施設があって、両親が共働きだった私は学校帰りにそこに通っていました。
田んぼのど真ん中に頼りの傘が...
その日はひどい雨でした。
いつも通り児童センターに向かっていた私は、同い年の子達の親が車で迎えに来ているのを、傘を差しながら横目でみて、羨ましく思っていました。
一人でトボトボ歩いていると突然、強い風。私の持っていた傘が飛ばされてしまいました。
これが足元に転がったぐらいだったら良かったのですが、私の下校していた道は田舎道で、右を見ても左を見ても田んぼ。
私の傘はあろうことか、田んぼのど真ん中にぽちゃりと落ちてしまいました。
どうしよう、私の家は遠いのに。
呆然とする私の横を、近くの中学校のジャージを来た男の子が、友達とケラケラ笑いながら通り過ぎて行きました。
「困ってたら助けるのが当たり前でしょ?」と物語る無言
「やっぱ、誰も助けてはくれないよね......。これは私がなんとかしなきゃかな......。取れるかな? きっと服も靴も汚れちゃうけど......」
落ち込んだ私は、飛んで行った傘の方を見ていました。
すると、さっきの中学生の男の子が田んぼの中に入っていくではありませんか。
その男の子はひょいっと傘を掴んだかと思うとこちらへ寄って来て無言で私に傘を渡し、やはり友達とふざけ合いながら帰っていきました。
「取ってあげる」とも「どうぞ」とも言ってはいませんでしたが、それが逆に「困ってたら助けるのが当たり前でしょ?」と物語っているようでした。
その時の男の子が、小さい頃の私のヒーローです。
あのときはびっくりしすぎて声が出なかったけど、本当にありがとう。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」「あの時はごめんなさい」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな誰かに伝えたい「ありがとう」や「ごめんなさい」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆さんの「『ありがとう』と伝えたいエピソード」「『ごめんなさい』を伝えたいエピソード」を募集している。
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