1000年以上の伝統受け継ぐ鍛冶職人は、何故「ロリータ包丁」を打ったのか 兵庫県三木市の【珍返礼品】鍛えた熱き魂の叫び
受け取った人は...
三木市役所総合政策部縁結び課の担当者によると、ロリータ包丁『JULIETTE』を返礼品として受け取った人は、返礼品登録された2015年から今までに、1人だけ居るという。居るんだ......。家で、使っているんだろうか。みじん切りとか、できるんだろうか。
ところで、この超絶ユニークな包丁を作ったのは、市内にある田中一之刃物製作所の代表で、鍛冶職人の田中誠貴さん。三木市は古くから金物作りが盛んで、「日本で最初の金物のまち」とも言われる。三木工業協同組合が運営する「三木金物」のウェブサイトによると、その歴史は1500年前から続いているという。
そして同サイトの田中一之刃物製作所の紹介ページにはこんなことが書かれていた。
「代々鍛冶職一筋、伝統を受け継いで参りました」
......なんだか、ロリータ包丁とのギャップを感じないでもない。田中さんは何故、蝶が宿った刃を持つ包丁を、作ったのだろう。記者の問いに、田中さんが語り始めた。
「包丁やナイフに興味のない方にとっては、世界一だろうが100均の包丁だろうが『ただの包丁』『あぁ...包丁ね...』『切れたら怖い』程度の認識。そのことに『な、ん、だ、と...これではイカン!』」(田中さん)
このままでは、福井・越前の親方、その師匠、そのまた親......と1000年以上の長きにわたって刃物を鍛え、技術を伝えてきた先人たちに、顔向けできない――田中さんは、そう思ったのだ。どうすれば、自分たちが作る刃物の技術のすばらしさ、切れ味の気持ちよさを、多くの人に知ってもらえるのだろう。何をすればいいのだろう。ノートにアイデアやラフスケッチを描く日々が続いた。