「向こう側」に迷い込んじゃった? ちゃぶ台を囲む少年と「異形の存在」...古民家に広がる不思議な世界がこちらです
「なんだコイツ」
「人間っていうらしいぞ」
「珍しいな」
そんな声が聞こえてきそうな不思議な写真が2023年9月3日、X(ツイッター)上に投稿された。
たたみの部屋、大きなちゃぶ台の周りに並ぶ黒々とした奇妙な姿の者たち。その中に一人だけ、Tシャツの少年がいる。まるで異世界に迷い込んでしまったかのようだ。
こちらは、茨城県在住のユーザー・浅野暢晴(@asanonobuharu)さんが投稿した写真。
これは一体、どういう状況......?
Jタウンネット記者は4日、浅野さんに話を聞いた。
今は誰も住まない家で感じた「誰かの気配」の残り香
浅野暢晴さんは彫刻家。国立博物館で見た土偶に衝撃を受け、作品制作を始めた。
「トリックスター」という名前の、三本足の黒い生き物の彫刻を、陶で作っている。二本足の人間と四本足の動物の間に立ち、八咫烏(やたがらす)のような、人と神様の間を繋ぐ存在をイメージしているそうだ。
実は、ちゃぶ台を囲む者たちだけでなく、ちゃぶ台の上に乗っているのも、食べ物やコップ、箸などに擬態した「トリックスター」。
彼らは9月9日から群馬県北西部・中之条町で実施される国際現代芸術祭「中之条町ビエンナーレ2023」のために制作したものだ。
展示会場は「やませ」という、江戸時代末期に建てられた大規模民家。今は誰も住んでいないが、下見をした際、人の気配が残されていると感じた。それに形を与えたいと思い、作品を考案したという。
「異形の存在がお盆で集まる人間達を真似をして、ちゃぶ台に集まっている様な様子をイメージしました」(浅野さん)
「やさしい世界」「一目惚れした」
ちゃぶ台の周りには、1つだけ空席がある。鑑賞者はTシャツの少年のように、そこに座ることができる。「そこに座って鑑賞することで、この世の向こう側の世界に行ってしまったように錯覚する様な風景を作りたいと思いました」と浅野さんは説明する。
トリックスターたちが織りなす不思議な世界に、ユーザーからは4万9000件を超えるいいねのほか
「すごい和気あいあいしててほっこりしてしまった」
「やさしい世界」
「今まで芸術とか興味なかったけど一目惚れした」
といった声が寄せられ話題に。反響について浅野さんは次のように語っている。
「話題になってくれて嬉しいです。このポストをきっかけに一人でも多くの人が中之条町に来てくれて、直接作品を見てくれたら、と思います」
トリックスターたちに出会える「中之条町ビエンナーレ2023」は9月9日~10月9日に開催。「やませ」での浅野さんの展示以外にも、町内各所で様々な展示や上演などが行われる。
会期中にシルバーウィークもあることだし、町内にたくさんある温泉に滞在しつつ、芸術の秋を体感してみるのはいかがだろうか。