もう轢かれちゃってるが... 希少な「ニホンヒキガエル産卵地」示す標識に注目集まる→役所が込めた思いとは
夏休みにドライブ旅行を計画している人も、多いだろう。都会を離れ、ひたすら田舎道を走っていると、思いがけない道路標識に出くわすことがある。
シカ、サル、イノシシ、うさぎ、ときにはクマ......。これらの野生動物のイラストが描かれている標識は、まあ見たことがあるかもしれない。
しかし、2023年8月4日にX(ツイッター)に投稿された、次の標識はどうだろう。
なんでも、「カエル注意」の標識らしい。投稿には、こんなコメントが添えられている。
「今日は、島根の中で最もユーモラスで最も鬼畜だと思っている標識を見てきた」
投稿者の「りん@異形矢印の人」(@unusuarrows)さんは、この標識を島根県で見つけたようだ。この投稿には、6900件を超える「いいね」(8月9日夜現在)のほか、こんな声も寄せられている。
「島根にこんな標識あるんですね~」
「カエルがあるなら、カメもどこかに有りそう......」
「ヒキガエルって車輪で轢くからヒキガエルっていうんだよね知らんけど」
「もう轢かれてますね」
なぜ島根県でカエルに注意する必要があるのか?
Jタウンネット記者は、まず投稿者「りん@異形矢印の人」さんの話を聞いた。
落ち葉がカエルに見えて、ヒヤヒヤ!
投稿者「りん@異形矢印の人」さんによると、写真を撮影したのは8月4日の13時ごろ、場所は島根県邑智(おおち)郡邑南(おおなん)町の徳前(とくぜん)峠というところだった。「峠の頂上を挟むようにして、同じ標識が上下線で2箇所設置されていました」と語った。
「『動物が飛び出すおそれあり』の標識の変種はマニアの間でも重宝されていますが、特に希少な『カエル』バージョンでしかもそれが轢かれてしまっている姿とは、遊び心があるな...と。道中で落ち葉がカエルに見えてヒヤヒヤしました」(「りん@異形矢印の人」さん)
そして、 ニホンヒキガエルの産卵地になっているための注意喚起のようだ、とのこと。
Jタウンネット記者は、次に邑南町役場に取材した。
島根県の中部に位置する邑南町は、人口約1万人。豊かな自然とともに暮らす、農業中心の町だ。古来よりたたら製鉄が盛んな地域で、国史跡に指定された「久喜銀山遺跡」も存在する。
Jタウンネットの取材に応えた邑南町役場羽須美支所の担当者によると、「カエル注意」の標識が設置されたのは、2011年12月頃。当時、島根県の農道改良工事が行われており、その道路沿いにニホンヒキガエルの産卵地があったのだという。
カエルのための側溝や暗渠も完備
「産卵地をそのままに残すために、道路改良の計画していたルートを5メートル程度ずらし、産卵地をそのまま残し、ふ化したヒキガエルが道路に直接出て車にひかれないように、高さを約1メートルかさ上げする工事となりました」(邑南町役場羽須美支所担当者)
万一カエルが側溝に落ちてしまっても、カエルが側溝から抜け出しやすいよう側溝の側面に段差が付けられた環境保全型側溝も作ったという。またカエルが道路を横断するための横断暗渠も設置されているそうだ。
「カエル注意」の標識の目的は、ヒキガエルの希少な産卵地が付近にあることを知らせるため。そして、産卵地を保護し見守っていくことで、様々な共存できる環境を大切に守る思いを育む、といった願いも込められている。
邑南町役場担当者は、「数百メートル離れた水辺での産卵が確認されています。付近を通行する際は注意して通行していただければと思います」と呼びかけた。