1900年の歴史ある神社、公式サイトを「RPG風」にしてしまう 宮司「あくまでオリジナルです」
長野県軽井沢町にある熊野皇大(くまのこうたい)神社のウェブサイトがツイッター上で注目されている。
そのトップページが、これだ。
「KUMANOKOTAI」と書かれたロゴマークは、どこかで見たことのあるような傾き。「導きの神々 そして伝説へ...」というサブタイトルも聞き覚えがある気がする。
ちょこちょこと歩くドット絵の宮司と巫女、ビットマップフォントのメニュー。さらに、ページにある「sound on」のチェックボックスをクリックすると、チープで独特な雰囲気が漂う8bitサウンドのメロディーが流れてきて......。
まるで懐かしのRPG のような世界観が形成されているのだ。
熊野皇大神社は、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が創建したと伝えられる神社。1900年もの歴史があるというのに、なんだこの自由過ぎる作風は。どうしてこんなことになったのか。
Jタウンネット記者は2023年5月29日、同神社の宮司・水澤貴文さんに話を聞いた。
「バカ真面目なサイトでは誰も見てくれない」
熊野皇大神社のウェブサイトはトップページだけでなく、神社の由緒やご神木の説明欄、さらには宮司のプロフィール欄もRPGのコマンド画面のようになっていて、世界観が徹底して統一されている。
サイトのアイデアを考えたのは宮司の水澤さん。「楽しくしたくてゲームのようにしました」と語る。
「いくら歴史の長い神社とは言ってもバカ真面目なサイトでは誰も見てくれない。多くの人に見てもらいたくてゲームみたいにしました」
本人はゲーム好きではあるが、それよりも「見てもらえるように」というところに重点があったそうだ。
以前は自力でウェブサイトを作っていた水澤さんだったが、ある時専門の業者に頼もうと決意。神社に樹齢1000年以上のご神木「しなの木」があり、"導きの神"である八咫烏(やたがらす)とゆかりの深いことから「RPGのような世界観が合うのでは」と思いついた。
そして、着想から約3年を経た2022年、ゲーム風のサイトが完成したのである。
オリジナルのクソゲーで遊べる
水澤さんはウェブサイトのリニューアルにあわせて、グッズの製作にも取り組んだ。
「御朱印帳 冒険の書」と「カセット型木札」である。
「御朱印帳 冒険の書」はウェブサイトの世界観に合わせてRPG風に仕上げた。裏面には八咫烏のイラストとコマンド風の画面が描かれている。
「カセット型木札」はその名の通り、家庭用ゲーム機のカセット風のアイテム。裏面にはウェブサイトと熊野皇大神社のオリジナルゲームにアクセスできるQRコードが印刷されている。
オリジナルゲームがどんなものかは「買ってからの楽しみ」だというが、意図的に「クソゲー」にしているという。
「昔あった延々と同じことをさせられるゲームとかいつまで経っても進まないようなゲームみたいな感じです」(水澤さん)
ところで......ウェブサイトやグッズはやっぱり"あのゲーム"を意識しているのだろうか。恐る恐る聞いてみると――。
「それは違います。あくまでオリジナルです」
水澤さんは、食い気味にそう答えたのであった。