「猛毒クラゲ」カツオノエボシを煮て食べてしまった猛者現る →クラゲ飼育員「絶対にお勧めしません」
「出汁取れないかなって思ってカツオノエボシ煮込んでる」
――目を疑うような光景が、ツイッター上で話題になっている。
こちらは、東京都在住の人気YouTuber・ホモサピさんが2023年5月21日に自身のツイッターアカウント(@hommsapi)に投稿した写真。水が張られた鍋の中に、青い半透明の餃子のようなものが入れられている。
一見キレイに見えるこの「餃子」の正体は、猛毒クラゲとして名高いカツオノエボシだ。毒を持つ触手に刺されると電流が触れたような痛みに襲われるという。アナフィラキシーショックを起こして、死に至ることも。クラゲが死んでいても毒が無くなるわけではないため、絶対に触らないようにしなくてはならない、
そんな危険な生き物を、煮込んで出汁をとって食べようというなんて......。
あまりにも挑戦的な行動に、ツイッター上ではこんな声が寄せられている。
「出汁がでるのはカツオとニボシです...」
「カツオだしってそういうことじゃないんよ」
「久しぶりに恐怖画像見ちゃった」
一体、なぜカツオノエボシを調理しようと思ったのか。そして、結果どうなったのか。Jタウンネット記者は23日、ホモサピさんに話を聞いた。
「ホタテ1匹を4リットルの水で薄めたような味」
ホモサピさんは「野食料理YouTuber」で、野生の生物を捕獲・料理して食べる様子を紹介した動画などを配信している。話題のカツオノエボシは19日の夜、前日までの南風で外洋から湘南エリアの浜に漂着したところを拾ってきたものだ。ホモサピさんの動画によると、専門家指導の下で行ったという。
「出汁を取ろうと思った経緯は『カツオノエボシは鰹出汁が取れる』という都市伝説的な噂を聞いていたからです」(ホモサピさん)
採取したカツオノエボシたちから砂を洗い流し、あとはそのまま丸ごと茹でた。取れた出汁は、「ホタテ1匹を4リットルの水で薄めたような味」で、ホタテっぽい香りはするもののほぼ無味だったそう。
また、ホモサピさんはカツオノエボシ本体の方も食べてみたという。
「本体は薄く貝類の出汁の香りで、貝ひものような、クラゲらしからぬ食感でした。正直ハイリスクな割にはアカクラゲの方が美味しいかなというレベルでした」
やはり気になるのは、「毒は大丈夫なのか?」という点だが、食べた後は特に体調に問題などは起きなかったという。
「カツオノエボシの毒はタンパク質系の毒なので、茹でたら失活します。60度程度で数分加熱すれば無毒化されるので、触っても平気になります」(ホモサピさん)
熱を加えれば食べても平気、とのことだが......。Jタウンネット記者は25日、60種以上のクラゲを展示している鶴岡市加茂水族館にも話を聞いた。
「食べる勇気に驚きました」
取材に応じた飼育課の池田周平さんによると、カツオノエボシは食用として流通していないクラゲであるため「お勧めはできない」。ただ、「しっかりと処理すれば食べることは可能だと思われます」と語った。
「あえて食べるとしたら、熱湯で茹でるだけでは不十分だと思われますので、気泡体(風船のような部分)以外を取り除き、よく洗った後に塩とミョウバンにつけて処理した方が良いと思われます」(池田さん)
「カツオノエボシの毒は加熱すれば失活する」という説については、熱した時間や温度によって失活しない可能性もあり、必ずしも無毒化できるとは限らないとのことだ。
また、下処理の段階で毒のある触手部分を取り除いたとしても、気泡体にも毒がある可能性はあるという。加えて、カツオノエボシの気泡体の中には一酸化炭素が入っているため、「それによる人体への影響も気を付けなければなりません」。
では、ホモサピさんのように「丸ごと」を「茹でただけ」のものを食べた場合、人体にはどんな影響があることが考えられるのだろうか。
池田さんは、直接食べてしまうことも少ない事例であるためどんな影響があるかはわからない、と前置きした上で次のように述べた。
「クラゲを食べてアナフィラキシーショックを起こしてしまう方もいるので、カツオノエボシについても、毒を取り除いた場合でもその可能性があります。これについては、体質、量などによっても異なりますので、一概に『こういった症状が出る』とは言えませんが、ひどい場合は呼吸困難にもなる可能性があります」
「正直、食べる勇気に驚きました。飼育員としては、絶対にお勧めしません(笑)」(池田さん)
読者の皆さんが浜辺でカツオノエボシを見つけたとしても、決して触ったり、ましてや調理して食べたりしてはならない。素人が手を出していいものではないのだ。
2023年5月31日11時5分編集部追記:記事初出時、本文中で鶴岡市加茂水族館担当者氏名に誤りがありましたので修正しました。