「幼い娘と2人で乗った帰宅ラッシュの電車。席を譲ってくれた大学生がスマホに打ち込んでいたのは...」(茨城県・50代女性)
二人の大学生が席を立ち...
私と娘はスーツケースに体重をかけ、ぼんやりと立っていました。しばらくすると、向かいに座っていた大学生らしき男子が、何も言わずにサッと席を立ってドアの方に行きました。
「あぁ、娘に席を譲ってくれたのだなぁ」と思い、私が彼の方を見ると、当人は目も合わさず知らんぷり。そしてしきりにスマホをいじっています。
私は感謝しつつ、空いた席に娘を座らせました。すると間もなく、その隣の席の大学生もサッと立ち、ドアの方へ行きます。けれども、その席には小さな物が置いてあったので「また戻るのだろうなぁ」と思い彼の方を見たら、ニコニコして恥ずかしそうに「座って座って」の合図をしています。
「でも、ここに荷物があるので」と私が指を差して改めてよく見ると、それはお財布のようでした。きっと立った時に後ろポケットからずり落ちたのでしょう。大学生は照れくさそうそれをサッと取り、また「どうぞ」と私が座るように合図をしてくれました。

周りを見るとどうやら、先に席を立ったクールな大学生は、娘だけでなく私も座れるように、周りにいた数人の友人たちとメールをしあっていたようなのです。それで、後で立ったおっちょこちょいな大学生が席を譲ってくれたのでした。仲間と思われる学生たちがメールしながらクスクスと笑っていました。
他県からやってきて疲れた風に見えた私たち親子を見かねての行動だったのでしょう。私は電車の中で、娘にも知られないように、これから悲しみの対面をする母のことを思い堪えていましたが、彼等の温かさに出会いジワジワとくるものがありました。
私の母も、人に優しく、困っている人を放っておけない人だったので、空から何かをしてくれたのかな? と思ったりもしました。
あれから10年、あの時の学生さんも立派な社会の中核となり、温かい心で世の中に尽くしているのだろうなと思います。学生さん、ありがとうございました。私達親子も、毎日を元気に生きています!
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