「ファンシー」「パリジャン」「チロリヤン」...「あの和菓子」以上に呼び方バラバラ!? 愛知ご当地おやつに「いろんな名前」がある理由
「生クリームをおいしく食べてもらいたい」
「あれ、実は、父親が考えたお菓子なんですよ」
電話口でそう語ったのは、蟹江町の洋菓子店「パリジャン」店主の弟さん、松田樹弥(たつや)さんだった。兄の和也さんと一緒に、洋菓子店を経営している。
先代社長である父・孝さんが独立前の勤務先で考案したものを、1975年創業以来、看板商品として、店名「パリジャン」の名を付けて販売しているそうだ。
「父親から聞いた話によりますと、当時、生クリームを使った洋菓子というと、高級品というイメージがあったのか、なかなか一般の人に普及しなかった。生クリームをおいしく食べてもらいたい、という思いから生まれたのが、ふわふわのスポンンジで生クリームを包んだ、この『パリジャン』だったのです。価格も、80円でスタートし、現在も120円(税込)で販売しています」(松田樹弥さん)
生クリームの高級イメージを、手軽に食べられる「おやつ感覚」に変えた、画期的な商品だったのだ。
先代・孝さんが考えた「パリジャン」のコンセプトは、次の通り。
・子供からお年寄りまで誰もが食べられる事
・スポンジと生クリームのみで作り、味の想像がしやすい事
・一つ一つを袋に入れ、手を汚さずに食べれる事
・子供のお小遣いでも買える価格である事
(洋菓子店「パリジャン」のHPより)
いちばん最後の、「子供のお小遣いでも買える」は、とくにキモだろう。
そして、先代と一緒に働いていた菓子職人仲間、「パリジャン」で修行した弟子たちが、それぞれ独立する際に、それぞれ独自の商品名を付けて販売することで、お菓子の存在が、様々な名前で広まっていった。愛知県内で数十店、岐阜や三重、大阪や鹿児島でも売っているお店もあるとのこと。仲間、弟子、孫弟子と、その数はどんどん増えつつあるようだ。
「近頃、ご当地おやつと呼ばれることがよくあります」「ちょっとしたお土産に買っていかれるお客様が多いようですね」と、松田樹弥さんは話してくれた。
「パリジャン」「ピレーネ」「ファンシー」「アントルメ」......名前は違うが、生クリームがおいしい、愛知県の「ご当地おやつ」。できればみんな食べ比べしてみたい。