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「ファンシー」「パリジャン」「チロリヤン」...「あの和菓子」以上に呼び方バラバラ!? 愛知ご当地おやつに「いろんな名前」がある理由

松葉 純一

松葉 純一

2023.05.11 08:00
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小麦粉の記事の中に餡を入れて、こんがり焼いた丸い和菓子。"アレ"は日本国内でいろんな呼び方をされている。

しかし、それ以上に様々な名前を持つ「ご当地おやつ」が愛知県に存在するらしい。

こんなお菓子である。

「埋木」(@umoregi01)さん投稿より
「埋木」(@umoregi01)さん投稿より

この写真は、ツイッターユーザーの埋木(@umoregi01)さんが2023年4月23日に投稿したもの。

四角いスポンジケーキの中に何かを入れ、四隅を中央に向かって折りたたんだもののようだ。

ツイートには、こんな声が寄せられている。

「蟹江が世界に誇る『パリジャン』ですね」
「ピレーネじゃないの?」
「北区にある洋菓子店では、お店の名前『アントルメ』と名づけられてます」
「尾張地方は『ファンシー』だと思う」
「我の住んでる大府やとチロリアンやな(よく買いに行きます)」
「チロリヤンやん?」
「パピヨン」

本当に、様々な名前が飛び交っている。これはいったいどういうことだろう? 

シンプルなお菓子だけど...違うところも

投降者「埋木」さんが問題のお菓子を撮影したのは、ツイート投稿日の4月23日。投稿のきっかけについて、こう語った。

「先日、帰省した際に両親と雑談をしていた際に、このお菓子の話になりました。私と母は『パリジャン』という名前でなじみがあったのですが、父は『ピレーネ』という名前で認識しており、同じ愛知県内でも呼称が全く違うことに興味を持った次第です」

要するに、様々なメーカーや菓子店が、このタイプのお菓子を様々な名前で販売しているため、それぞれ「一番馴染み深い名前」が違うらしいのだ。

埋木さんにとってのそれが、「パリジャン」。10年近く前に上京しており、最近ではこのお菓子を食べる機会はほとんどなかったが、幼少期から身近な存在だった。保育園でおやつとして出されたこともあるという、なんとも懐かしい存在らしい。

なお、写真のお菓子は「ボンとらや」(豊橋市)の「ピレーネ」という商品。「ピレーネ」を食べたのは、この時が初めてだった、と埋木さん。

「初めて『パリジャン』以外を食べることとなりました。シンプルなお菓子なので、もちろんよく似ているのですが、パリジャンとはスポンジ部分の食感や生クリームの味に若干の違いを感じ、多様さと奥深さを面白く感じた次第です」(「埋木」さん)

このお菓子は何なのか。Jタウンネット記者は県内の洋菓子店を取材した。

「生クリームをおいしく食べてもらいたい」

「あれ、実は、父親が考えたお菓子なんですよ」

電話口でそう語ったのは、蟹江町の洋菓子店「パリジャン」店主の弟さん、松田樹弥(たつや)さんだった。兄の和也さんと一緒に、洋菓子店を経営している。

先代社長である父・孝さんが独立前の勤務先で考案したものを、1975年創業以来、看板商品として、店名「パリジャン」の名を付けて販売しているそうだ。

洋菓子店「パリジャン」のHPより
洋菓子店「パリジャン」のHPより
「父親から聞いた話によりますと、当時、生クリームを使った洋菓子というと、高級品というイメージがあったのか、なかなか一般の人に普及しなかった。生クリームをおいしく食べてもらいたい、という思いから生まれたのが、ふわふわのスポンンジで生クリームを包んだ、この『パリジャン』だったのです。価格も、80円でスタートし、現在も120円(税込)で販売しています」(松田樹弥さん)

生クリームの高級イメージを、手軽に食べられる「おやつ感覚」に変えた、画期的な商品だったのだ。

先代・孝さんが考えた「パリジャン」のコンセプトは、次の通り。

・子供からお年寄りまで誰もが食べられる事
・スポンジと生クリームのみで作り、味の想像がしやすい事
・一つ一つを袋に入れ、手を汚さずに食べれる事
・子供のお小遣いでも買える価格である事
(洋菓子店「パリジャン」のHPより)

いちばん最後の、「子供のお小遣いでも買える」は、とくにキモだろう。

そして、先代と一緒に働いていた菓子職人仲間、「パリジャン」で修行した弟子たちが、それぞれ独立する際に、それぞれ独自の商品名を付けて販売することで、お菓子の存在が、様々な名前で広まっていった。愛知県内で数十店、岐阜や三重、大阪や鹿児島でも売っているお店もあるとのこと。仲間、弟子、孫弟子と、その数はどんどん増えつつあるようだ。

「近頃、ご当地おやつと呼ばれることがよくあります」「ちょっとしたお土産に買っていかれるお客様が多いようですね」と、松田樹弥さんは話してくれた。

「パリジャン」「ピレーネ」「ファンシー」「アントルメ」......名前は違うが、生クリームがおいしい、愛知県の「ご当地おやつ」。できればみんな食べ比べしてみたい。

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