WBCチェコ代表の故郷の料理はどんなもの? 都内の「チェコ料理専門店」で未知の魅力に迫る
侍ジャパンの3大会ぶり3度目の優勝で幕を閉じた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。期間中は多くの人が選手たちのプレーに熱狂した。
日本代表は言わずもがなだが、日本の野球ファンの心をグッと掴んだチームがある。
第1ラウンド・B組で、日本と対戦したチェコ代表だ。
それぞれ野球以外の「本業」を持つ選手が集まったチームで、彼らの爽やかなプレーや振る舞い、SNS上などで発信された日本を楽しむ姿、大谷翔平選手とのやり取りなどが、人々をすっかり魅了した。WBCをきっかけに、チェコという国が気になりだしたという人は、きっと少なくないはずだ。
かくいう記者もその一人。チェコのことをもっと知りたい。だからと言って、すぐに飛んでは行けないのが現実。
だから、都内でチェコを味わうことにした。
今回記者がやってきたのは、東京メトロ丸ノ内線・四谷三丁目駅から徒歩3分ほどの場所にあるチェコ料理店「だあしゑんか」(東京都・新宿区)だ。
シンプルな見た目だけど......
だあしゑんかのマスター・高野文雄さんは、観光でチェコを訪れ、その文化に感銘を受けたという。その後、日本国内のチェコ料理店で修行を重ね、「だあしゑんか」をオープン。今年で創業16年目を迎える。
地下にある店内は落ち着いた雰囲気で、高野さんが振る舞うチェコ料理と共に、チェコのビールなども味わえる。
メニュー表に並ぶのは聞きなれない名前のメニューばかり。しかし、添えられている写真はどれもおいしそうで、どれにするか迷ってしまう。Jタウンネット記者は高野さんにお願いし、チェコ料理初心者におススメのメニューを作ってもらうことにした。
最初に食べたのは「ブランボラーク(プレーン)」だ。
ブランボラークとは、じゃがいもをすりおろして焼いたお好み焼き風のパンケーキで、チェコの人々に親しまれている家庭料理の1つ。マジョラムというオレガノに似たハーブが効いているのがポイント。高野さんによると、このマジョラムを使うことでチェコ料理らしさが出るのだという。
フライパンでじっくり焼き上げられていて外はさっくり、中はふわふわの食感がたまらない。じゃがいもの素朴な味とマジョラムの繊細で甘みのある香りの絶妙なマリアージュに魅了される。
添えられたタルタルソースはピクルスの漬け汁を使っているそうで、酸味が効いている。これを付けると、マジョラムの風味がより強く感じられ、ますます虜になってしまった。
シンプルな見た目なのに何度でも楽しめる、侮れない1品だ。
「グラーシュ」と「クネドリーキ」は相性抜群
次に食べたのは「牛肉のグラーシュ」。
チェコの国民食のような存在で、ハンガリーの「グヤーシュ」という煮込み料理がルーツになっているそうだ。「日本で言うところのカレーライスみたいなもの」と高野さんが教えてくれた。
テーブルに運ばれてきたグラーシュの皿のふちには、小さなパンのようなものが添えられていた。高野さんによるとこれは「クネドリーキ」というパンで、チェコの主食の一つ。焼かずに茹でて作るのが特徴的なのだとか。
ハヤシライスのような見た目だが、甘味はなく、上品な印象。非常に深みがあり、大人な味わいのビーフシチューといった感じだ。
グラーシュ単体だとかなり濃厚なので、クネドリーキと一緒に食べるのがちょうどいい。牛肉や玉ねぎのうまみが存分に溶け込んだ落ち着いた味が、とっても気に入った。
デザートや冷菜も充実
だあしゑんかではチェコの伝統菓子を味わうこともできる。
今回は「ブブラニナ」というチェコの家庭の定番ケーキを堪能した。素朴で優しい甘味とフルーツの自然な酸味のコンビネーションが特徴的で、初めて食べるはずなのになぜかなつかしさがこみあげてくる。
ほかにも、一人当たりのビールの消費量が世界一だというチェコらしく、居酒屋名物に数えられる「ウトペネツ」(ピクルスのように酢漬けにしたソーセージ料理)のような、ビールにぴったりの冷菜類も充実していた。
高野さんによれば、国内で気軽にチェコの文化を楽しめる店とあってかWBC以降、来店者数が2割ほど増加した。
「まさか野球でチェコが注目されるなんてびっくりしました。
WBCで活躍したチェコの選手たちが普段どんなものを食べているのか気になったら、ぜひいらしてください。もちろん、料理だけじゃなくビールも楽しんでほしい」(高野さん)
チェコの料理とビールで1杯――。そんな夜を過ごしたい人は、だあしゑんかへ。