なぜこんな場所に? 繁華街の片隅で人々を見守る「黄金のファラオ像」の謎を追う
北海道・千歳市の繁華街で奇妙なモノと目が合った――2023年3月8日、そんな呟きがツイッターに投稿された。ありふれたビルの前から投稿者を見つめていたのは、1体の「黄金の像」だった。
緑の椅子に座り、腹の前で手を組んでいるのは、エジプトのツタンカーメン王を彷彿とさせる黄金のマスクを身に着けた全身金ぴかの像。
選挙ポスターや「AED」のロゴ、「カラオケ」の幟といった日本の日常風景のなかにあって、完全に異質である。
こちらはツイッターユーザーの「mimizuku@廃墟と街巡り」(@hopigon)さんが投稿した写真。
一体、ナニモノなのか。なぜこの場所に鎮座しているのか。
Jタウンネット記者は9日、まず投稿者のmimizukuさんに話を聞いた。
初めは像かと思ったが...
mimizukuさんは7日、北海道千歳市の繁華街を歩いていた際にあまりにも奇妙な光景を目の当たりにした。
「はじめは単純に像かと思いましたが、横にコイン挿入口があるのを見つけました。
機械部分が撤去されていたので、その場ではこれがどのようなものか分からずツイッターで呼びかけてみたという形です」(mimizukuさん)
mimizukuさんの投稿には、「昔ゲーセンで見た気がする」、「パッと見で占いマシーンだと思いました」といった声も寄せられている。
これは何かのゲームなのだろうか。だとしたら、どうやって遊ぶのだろうか。
次に記者は、大型体感ゲーム機を中心にビデオゲームやピンボールなど、昭和のレトロなゲームの保存活動を行う「日本ゲーム博物館」店長の半澤雄一さんに投稿の写真を見てもらい、像の正体に心当たりがないか尋ねた。
半澤さんによると、黄金の像には「ファラオの予言」という名前があるらしい。
本来の姿は...
「ファラオの予言」はサンワイズ社が製造していた占いゲームマシンで、1990年代に稼働し、全国規模で展開されていたという。
なお、千歳市で発見されたマシンは、ただ腹の前で手を組んでいただけだったが、半澤さんによれば手の上に「クリスタルボール(水晶に見立てた玉)」が、膝上に「キーボード」があるのが本来の姿。
ゲーム博物館では完全体の「ファラオの予言」を所蔵している。
膝に置かれた文字盤やボタン付きの機械で占ってもらうジャンルを選択し、名前や生年月日、性別などを入力。その後「水晶玉」に手を乗せて念じると、予言書がプリントアウトされて出てくる、というのが「ファラオの予言」の一連の流れ。
「あなたの神を信じ迷ったときはいつでも来てください」
という音声が最後に流れ、占いは終了するという。
ちなみに、ゲーム博物館で所蔵している筐体も数年前までは稼働していたが、現在は動かなくなってしまっている。同館自体も2024年春のリニューアルオープンに向け現在は休館中で、半澤さんは
「お約束はできませんがオープン後は稼働する姿をお見せできるといいなと思います」
と語った。
なぜこんな場所に?
ところで「黄金の像」の正体は分かったが、一体なぜビルの入口に置かれているのか。
Jタウンネット記者は10日、ビルを管理するビジュアルコーポレーションの不動産管理課にも話を聞いた。
すると、返ってきたのは優しい答えだった。
「知人が、ツタンカーメンの占いマシンが壊れ使用できなくなり廃棄するとの事だったので、ツタンカーメンがかわいそうになり引き取り、いまだに一緒にいます」
「ファラオの予言」は2007年頃から設置しているそうで、「ビルを利用するお客様に喜んで頂いたり驚かしたりしたい」という思いも込められている。イベント行事の際にはかわいく着せ替えもしているとのこと。
多くの人に予言を授けてきた「ファラオ」はその役目を終えた後、千歳の街の優しく見守るという新しい役目を与えられていた。