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強くて、かわいくて、環境にも優しい。 廃棄されてた「ホタテの貝殻」で作ったヘルメットが最高かも

松葉 純一

松葉 純一

2022.12.28 08:00
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自転車に日常的に乗っている人は、もうご存じかもしれない。2023年4月から、全ての自転車利用者にヘルメット着用が努力義務化されることを......。

22年12月20日、改正道路交通法が閣議決定された。

努力義務だから罰則はないらしいが、やはり気になる。万が一事故に遭った時、ヘルメットなしだと致死率が倍以上になるらしいし......。

にわかにヘルメットへの関心が盛り上がる昨今、とあるユニークなヘルメットがSNSで話題になっている。

「ホタメット」(画像提供:甲子化学工業)
「ホタメット」(画像提供:甲子化学工業)

廃棄されたホタテの貝殻を活用するヘルメット、その名も「ホタメット」という。

まさに貝殻のような姿に、ツイッター上では「かわいい」「美しい」「きれい」など、そのデザインを絶賛する声が寄せられている。

しかし、なぜホタテでヘルメットを? Jタウンネット記者は、販売元である甲子化学工業(大阪府東大阪)を取材した。

廃棄物だった貝殻が、人と地球を守るために生まれ変わる

甲子化学工業は、1969 年創業のプラスチックメーカーで、さまざまな製品のパーツや生活雑貨などを開発・生産している。これまでは、卵の殻とプラスチックを組み合わせた新素材を開発していたそうだ。

卵の殻というのは、そのほとんどが炭酸カルシウムでできている。そして、ホタテの貝殻にもその炭酸カルシウムが含まれている。同社はこれが、新素材の材料として使えるのではないかと思いついた。

取材に応じた開発責任者・南原徹也さんは、ホタテ由来のヘルメットを作ることになったきっかけについて、次のように説明する。

 猿払村内、堆積されているホタテ貝殻。2021年には、ホタテ貝殻再利用を目的とした国外への輸出が途絶えてしまったことを機に、地上保管による環境への影響や堆積場所の確保などが地域の社会課題となっていた (2022年8月撮影、プレスリリースより)
猿払村内、堆積されているホタテ貝殻。2021年には、ホタテ貝殻再利用を目的とした国外への輸出が途絶えてしまったことを機に、地上保管による環境への影響や堆積場所の確保などが地域の社会課題となっていた (2022年8月撮影、プレスリリースより)
「貝殻について調査を進めていく中で、ホタテ水揚げ量日本一位に何度も輝く、国内有数の生産地である北海道猿払村を知るとともに、村のある宗谷地区では、ホタテを加工する際に、水産系廃棄物として貝殻が年間約4万トンも発生していることを知りました。
そこで、貝殻の有効活用およびアップサイクルについてご一緒に何かできることがないか、猿払村にお声がけをさせていただきました」(南原さん)
日常的にプラスチック製ヘルメットを着用する猿払村の漁師。2023年春ごろよりホタメットを試験的に利用していく予定(プレスリリースより)
日常的にプラスチック製ヘルメットを着用する猿払村の漁師。2023年春ごろよりホタメットを試験的に利用していく予定(プレスリリースより)

また、貝殻の本来の役割は「外敵から身を守ること」。ホタテ漁は「危険と隣り合わせであったこと」から、ホタテ漁師の安全を守るヘルメットを作ることに。

「役目を終えた貝殻が、人と地球を守るために生まれ変わる。」――そんな想いから、研究が進められた。

ホタテに似せて、強度アップ

ホタテの貝殻と廃プラスチックをベースに、大阪大学の宇山浩教授(工学研究科応用化学専攻高分子材料化学領域)と共同研究を行い、生み出されたのが新素材「カラスチック」。

プラスチックだけよりも強度(曲げ弾性率)が約 33パーセント向上し、またCO2 削減にも寄与するという。

カラスチック(プレスリリースより)
カラスチック(プレスリリースより)

それをヘルメットにする際、貝殻のようなフォルムにすることで強い強度を生み出した。ウネウネとした表面はホタテ貝の構造を模倣した特殊なリブ構造で、これがあることで約30%も耐久性が向上するというのだ。

自然界の仕組みを応用して技術開発に活かすことを、生物を意味する「Bio」と、模倣を意味する「Mimicry」を合体させ、「Biomimicry (バイオミミクリー)」と言う。「ホタメット」は、その考えに基づいて設計されたというわけだ。

カラーバリエーションは「海にまつわる5色」プレスリリースより
カラーバリエーションは「海にまつわる5色」プレスリリースより

そして完成したホタメットは2022年12月14日に発表され、本発売は2023年3月以降に予定している本発売に先駆け、クラウドファンディングサイト「Makuake」で先行予約販売を開始した。

製品化に至ったのは、近年、北海道でも大型地震の発生や、異常気象による大雨・雪害など災害リスクが高まっているため、ホタテ漁師だけでなく、もっと多くの人々を守る防災ヘルメットとしても活用できればと考えたから。

27日15時時点ですでに360人以上のサポーターが応援購入し、目標金額36万円のところ、153万円以上が集まっている。

ホタメットへの大きな反響に対して、南原さんは次のようにコメントした。

「想定を越える反応をいただけたことが、チーム一同の励みになっております。このプロジェクトはただプロダクトを販売することが目的ではなく、地域の廃棄物問題と向き合い、廃棄物にも新たな価値を見出すことで資源として有効活用していこうという想いから始まりました。多くの方にその意図が伝わり、そして賛同いただけたことが何よりも嬉しいです」「これからもモノづくりを通じて、社会に貢献できるよう尽力してまいります」(南原さん)
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