「すみません。カットしてください」 町のPRキャラを「着ぐるみ扱い」して郵便局長が謝罪→どんな気持ち?キャラ本人に聞く
遊園地やテーマパークで動き回り、人々を楽しませてくれている様々なキャラクターたち。子供たちに夢や希望を与える彼らの「中の人」の存在を明かすことは、タブー視されることが多い。
だから間違って も彼らのことを「着ぐるみ」などと呼んではいけないのだが......山形県のとある町では、あるお偉いさんがうっかりやらかしてしまった。
事件が起こったのは、2022年11月4日、山形県朝日町の非公式PRキャラクター「桃色ウサヒ」のオリジナルフレーム切手の発売記念贈呈式でのことだ。同町の役場で行われたイベントにはウサヒ本人をはじめ、鈴木浩幸町長、宮宿郵便局の佐藤徳治局長が出席した。
その「失言」は、佐藤局長の口から飛び出した。
「朝日町の産業まつりがあります。ウサヒの着ぐるみを私が借りまして、郵便局バージョンで、お手伝いをする企画を考えていますので......」
なんということだろうか。集まった報道陣の前でウサヒのことを「着ぐるみ」と言ってしまったのである。
現場の記者は尋ねた――「着ぐるみという表現は大丈夫なのか?」。
それに対し局長は「ダメでしたね。すみません。カットしてください、カット」とコメントしたのだが......残念ながらこのやり取りはテレビユー山形のニュース番組「Nスタやまがた」で放送され、TBSのニュースサイト「TBS NEWS DIG」の記事でも紹介されることに。
さらには、ウサヒ本人が自身のツイッターアカウント(@momoiro_usahi)で
「このコメントが許されるのが山形県朝日町」
という呟きと共に佐藤局長のコメントを取り上げたニュース番組の画像を取り上げたことで、ツイッター上でも注目を集めてしまった。
ホントのところ、ウサヒはどう思ったの?
着ぐるみ扱いされてウサヒ本人は平気なのだろうか。佐藤局長の発言を、実際のところはどう思っているのだろう。
11月9日、Jタウンネット記者はウサヒ本人を直撃取材した。するとウサヒが明かしたのは、こんな心境だった。
「局長がテンション上がって普段のノリが出たなって思いました。
ウサヒは仕事関係者やファンの間では普通に着ぐるみ扱いなのですが、インタビュアーさんから見たらそりゃあ違和感あっただろうなあって思いました。よそ行きのインタビューだったけど、なんか気持ち昂ってつい本音出たなと」
このウサギ、冷静である。というか「普通に着ぐるみ扱い」なのか......。不思議に思ったが、それにはウサヒの成り立ちも関係していた。
ウサヒは2008年6月、東北芸術工科大学の大学院生による「無個性な着ぐるみキャラクターを使って地域を内的に盛り上げる」という研究の一環で誕生した。それ以降もウサヒは、「無個性な着ぐるみでも地域のプロモーションに有効である」という実験ベースのプロジェクトとして運営されている。
つまり、ウサヒは着ぐるみ――もっというと、「無個性な着ぐるみ」という前提で稼働しているのだ。朝日町の公式ウェブサイトでもウサヒは「山形県西村山郡朝日町に生息する無個性・無軌道・無表情の3拍子が揃った特徴がないピンク色のウサギの着ぐるみ」と堂々と紹介されている。
「通称・備品」なので...
ウサヒは、さらに続ける。
「『動ける備品』とも言われているので、どちらかというとモノ扱いの認識が濃く、ウサヒに関連して修理、クリーニング(地元クリーニング店にて)などの単語もよく出てきます。
ツイッターのプロフィールにも『通称・備品』と書いております」
着ぐるみ扱いどころか、備品扱いだって慣れたものなのだ。
だから佐藤局長の「着ぐるみ」発言は何も問題はないし、何ならカットするよう求める必要もなかったのだ。ウサヒは正真正銘、自他ともに認める「着ぐるみ」なのだから。
とはいえ、ウサヒは切手の発売に加え、22年1月22日にはヴィレッジヴァンガードとコラボ商品まで販売される人気キャラクターであることも事実。本人も、モノ扱いされるのは不服なのでは?
「個々の企画やツイッターなどでは、あんまり真面目なことはせず、シュールに脱力した感じを町の人と作り上げていくことを大事にしています。なので、雑に面白くサブカル色強く取り扱ってもらえるのは大歓迎です」(桃色ウサヒ)
......寛大すぎるぜ。
「着ぐるみ」だからこそ活動の幅が広く、自由なウサヒのさらなる躍進に期待したい。